ある日、恋人に急に呼び出されて、彼の家に遊びにいった時のことです。彼の家は狭いので、いつも部屋に上がると、そのままベッドに座る形になるのですが、その日、相手はなんだかソワソワしている印象を受けました。いつもならテレビを見たり、雑談をしたりするのですが、その日はいきなり体を密着してきて、迫ってきたのです。やっぱりそういうことは、きちんとシャワーを浴びて、泊まる時にしか嫌だったので、いきなり行為に私は抵抗しました。
その際、私は手にコンビニで買ったペットボトルのお茶を持っていたのですが、彼から離れようと仰け反った瞬間、ベッドの下に落ちてしまいました。そしてそのまま手を伸ばしてお茶を取ろうとした瞬間、ベッドの下に人間がいることに気付いたのです。突然のことに私は、大きな悲鳴をあげました。よく都市伝説とかで、ベッドの下に斧を持ったストーカーがいるとか聞いたこともありますから、そんな危険な人物に遭遇してしまったと思ったんですよね。
すると彼は「あれ、◯◯じゃん! おまえこんなところでなにやってるんだよ?」と男に話しかけました。どうやらベッドの下の男は彼の友達だったらしく、相手はそのまま笑いながら帰っていきました。でもそのやりとりが、かなり演技っぽいというか、わざとらしかったため、私は彼の最初の不可解な言動から、ある疑惑が浮かびました。おそらく最初から私に迫ってきたのも、友達のためだったのではないかと思います。彼は私とベッドで絡む様子を、友人に見せようとしていたのかもしれません。
それに過去、よく彼から目隠しをされていたんですよね。もしかしたらその時、友人と入れ替わっていたのでは、と考えると怖くなりました。それは男友達どうしの悪ふざけだったのかもしれません。でも恋人以外に夜の姿を絶対見せたくない私は、そんなことを計画していたかもしれないと思うだけで恐怖なんです。もちろんその日は、すぐに帰宅しましたし、しばらくして彼とは別れました。
取材/構成・篠田エレナ
写真・www.metaphoricalplatypus.com