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森監督のチーム再建ビジョン(2) 投手陣を鼓舞させる「あと10勝」の理論

 森繁和監督(62)は落合政権だけではなく、谷繁元信前監督の下でもヘッドコーチを務めていた。参謀役の重要性は十分に分かっているはずだが、チーム編成の席上でこう訴えていたそうだ。「全責任はオレが取る!」今季の中日は森監督の強い要望により、ヘッドコーチも作戦担当コーチも置かない陣営になった。

広島東洋カープ 89勝52敗2分け
中日ドラゴンズ 58勝82敗3分け

 緒方カープは「37」の貯金を稼ぎ、独走状態で優勝した。2位巨人以下の5球団全てにも勝ち越したわけだが、最大のお客さんは中日だった。直接対決の勝敗は17勝7敗1分け。中日だけで「貯金10」を提供した計算になる。問題は、「借金24」をどう減らすかだ――。

○6回終了時点でのビハインドゲームの勝敗 9勝55敗
○逆転勝ち 25試合
○逆転負け 30試合

 セットアッパー、クローザーで落とした試合も多かった。投手力で勝ってきたチームでもあるだけに再整備は不可欠だが、森監督に近い関係者によれば、投手陣についてはさほど心配していないという。昨季の借金24を指して、「ペナントレースのなかであと10勝すれば、借金20までは解消できる計算だし、残りのマイナス4はチームの勢いでなんとかなる」と話しているそうだ。計算ではたしかにそうなのだが…。

 森監督はコーチ時代から「期待」と「計算」を線引きしてきた。現時点で後者の「計算」、つまり、確実に計算できる先発投手と見ているのが、吉見一起と大野雄大と2人だけ。あとは「期待」だが、福谷、ロンドン、アラウホ、そして、新人の柳裕也に関しては「計算」に近づける起用を考えている。

 まず、右腕のロンドンは160キロを投げるが制球難で、未知数な部分が多い。森監督は「ダメなら、今年は使わない」とし、来年以降の戦力としてファームで改造するつもりでいる。左腕・アラウホは先発で調整させ、ロンドンが使えるのならそのまま先発ローテーションに入れ、ダメなら、中継ぎの主軸として使っていくという。

 アラウホがフィリーズに在籍していたころを知る米国人ライターがこう言う。「身長が200センチ。150キロ以上を投げると日本では紹介されたようですが、変化球投手です。持ち球が多彩で、注目してほしいのは曲がり幅の大きい、鋭角なスライダーです。長身なので投球全てに角度もあり、多くて打者一巡しか対戦しない中継ぎで使うのなら、日本のバッターは相当苦労すると思いますよ」

 他の先発要員は山井、ジョーダン、新人・柳、そして、森監督がまとまりかけていたトレードを御破算にして残した伊藤準規など。オフに左ヒジにメスを入れた2年目の小笠原は交流戦半ば以降の起用を考えているそうだ。

 2桁勝利に到達した投手はゼロ、規定投球回数に届いた投手もゼロ。こうした不安定な先発スタッフをアラウホが支えるとなれば、昨季の「逆転負け30試合」は繰り返さないだろう。

 「柳は2ケタ勝利できる力を持っています。ちょっと早いですが、各メディアとも新人王候補として取材していく」(ベテラン記者)

 森監督が「あと10勝積み重ねれば、借金20までは解消」と言い切った自信は、ドラフト会議で柳を引き当てたことにあるのもしれない。トレードの経緯を知っている伊藤も「今年こそは!」の気持ちを強く持っているはずだ。不安要素はクローザーが決まっていないこと。誰になるのかはキャンプ、オープン戦を見てからになるようだが、やはり、黄金期の西武野球と落合時代のオレ流を知り尽くした森監督が最下位に沈むことは考えにくい。「全責任を負う」と言い切った決意もすごいが、中日が浮上すれば、その中日に17勝7敗1分けと大きく勝ち越していた広島の独走は消える。大型補強の巨人に対する包囲網も作られれば、今年のセ・リーグは大混戦になるだろう。(了)

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