さらに挙げられるのが、大城卓三の起用法や選択肢が増えたことも「炭谷効果」の一つだろう。入団当初より高い打撃センスを発揮してきた大城は今季、主に一塁手としての出場を続けており、丸佳浩、岡本和真らとともにクリーンナップを形成し、打線の核となっている。小林・炭谷の両捕手がいることで大城の素質が如何なく活かされていることは言うまでもない。
無論、炭谷自身も今月13日の古巣・西武との交流戦では3ランを放ち、16日の日本ハム戦では今季不調のエース・菅野智之を好リードで7勝目に導くなど、様々な面で貢献度が増してきている。すでに巨人に無くてはならない戦力として期待以上の働きを見せ、指揮官である原辰徳監督はベテランを「生きた教材」と評し、同じポジションで競う小林とのさらなる相乗効果を期待する。
過去、巨人は新たな捕手を獲得することで、チームの活性化を図ってきた記憶が鮮明だ。平成最初の年、中日から獲得した中尾孝義の加入でまさに投手陣が生まれ変わり、日本一にまで駆け上がった。また、シーズン序盤から下位に沈んでいた1992年は、西武から大久保博元が加わると攻守にわたり活躍、チームを押し上げるキーマンとなった。そして2001年には新人として阿部慎之助が入団、チームの顔として、また長きにわたり土台として「扇の要」となる。
2019年シーズン、交流戦を戦い上位争いも激しさを増してきた今、炭谷銀仁朗が巨人の新たな柱となり、チーム全体を支える存在となってきたことは明らかだ。頼もしいベテラン捕手に引っ張られる形で、いよいよ覇権奪還へ向け最重要となる夏場を迎える。(佐藤文孝)