6月18日、セパ交流戦・巨人対オリックスの試合前、野球・日本代表、侍ジャパンの稲葉篤紀監督がグラウンドに現れ、両球団にあいさつした。その際、出たのが巨人のショート・坂本勇人(29)の三塁手起用論である。
「サードも含めて、いろいろ考えていかないといけない」
今季の坂本は、打撃好調だ。打率、打点に加え、本塁打までリーグトップ争いを繰り広げている。主砲・岡本に代わって4番に入った試合もあり、強い存在感でチームをけん引してきた。
稲葉監督は「ショートが基本的なライン」とも語っていたが、「三塁・坂本」案は伝統球団の4番を軽視したことにならないだろうか。
「坂本は稲葉監督になってから、代表に招集されていません。今年3月、メキシコとの強化試合が行われた際、サードを守ったのはヤクルトの村上と阪神の大山です」(球界関係者)
三塁手に関しては、12球団全体が過渡期にあるもかもしれない。目下、売り出し中のヤクルト・村上宗孝(19)には一発の魅力がある。しかし、失策数は12球団ワースト。ヤクルト小川監督は「守備には目をつむってでも」の思いで、打撃優先で育てている。
対照的にショートは坂本以外にも、埼玉西武・源田、広島・田中、ソフトバンク・今宮らもいて、ここに打撃絶好調の坂本を入れて競争させるのは、むしろ、戦力ダウンになるかもしれない。他ポジションが守れるのなら、彼を併用することも考えるべきなのかもしれない。
とはいえ、侍ジャパンの三塁にふさわしい選手はほかにもいる。阪神の正三塁手・大山悠輔(24)、巨人・岡本和真(22)がそうだ。岡本は一塁手としての出場も多いが、2人は4番だ。2人の4番バッターを坂本と競わせるのは、伝統球団に対し、いささか配慮に欠いていたようにも思えるのだが…。
前出の球界関係者がこう続ける。
「稲葉監督が坂本の三塁手起用を示唆したのは、東京五輪を意識してのもの。一方で清宮(幸太郎=20)の招集も諦めていませんよ」
一塁手、指名打者の清宮が加われば、三塁から弾き出される大山、岡本はスタメン出場もかなわないかもしれない。
侍ジャパンの指揮権は稲葉監督にある。12球団はそこに踏み込んだ発言はしてはならないと自覚しているが、仮に大山が外れて急造三塁手の坂本がスタメン出場するようなことになったら、阪神のメンツは丸潰れだ。
「前回WBCを制したアメリカ代表は、招集された選手のほぼ全員が代理人を介して起用法に関する条件を突き付けてきました。試合中、勝手に投球練習を始めるピッチャーもいれば、ポジションの重複する選手同士がスタメン出場を分け合ったりと、ジム・リーランド代表監督は采配に自分のカラーを出せませんでした。ストレスとの戦いだったと思いますよ」(米国人ライター)
侍ジャパンがアメリカ代表のような状況に陥ることは考えにくいが、選手を送り出す側の球団の立場、考え方も聞いておくべきだろう。
(スポーツライター・飯山満)