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WBC情報 「世界一奪還」まであと2勝 侍ジャパン二次ラウンドで直面した『アメリカ式流儀』

 6戦全勝。侍ジャパンが二次ラウンド最後のイスラエル戦に勝利し、世界一奪還まで、あと2勝と迫った。

 「平野(佳寿=33)を早いイニングで使って、最後は増井、秋吉を挟んで、牧田に繋ぐ…。クローザーを決められずに大会本番を迎えましたが、なんとなく、継投策のパターンができてきましたね」(プロ野球解説者)

 イスラエルは最後の攻撃で意地を見せた。予選ウランドを戦いながら構築された“クローザー・牧田”を苦しめ、3点をもぎ取った。この反撃を予想する取材陣は少なくなかった。8回裏、3番・青木宣親(35)が二塁打で出塁した直後のことだ。イスラエルベンチは迷わず、4番・筒香嘉智の敬遠を指示した。この時点でのスコアは、6対0。ワンサイドゲームである。勝負を諦めていたら、敬遠策は取らなかったはずだ。

 今大会は、このイスラエルの快進撃も大きく報じられていた。代表チームのスタッフによれば、国内リーグはあるそうだが、国全体としての野球人口は約5000人。28人の登録メンバーのなかで、イスラエル国籍の選手はS・リペツだけ。あとはアメリカ国籍で、「イスラエル出身の先祖がいる」「イスラエルで生まれた」などの選手だ。WBCは代表チームに関する取り決めが緩い。そんな“もうひとつのアメリカチーム”を指揮したジェリー・ウェインスタイン監督は、各メディアに今大会の快進撃について聞かれ、こう語っていた。

 「ケミストリー」

 直訳すると、化学、相性ということになるらしいが、「組織の能力、パフォーマンスが高まっている」との意味で使うこともあり、メジャーリーグではよく使われるフレーズだそうだ。「試合を重ねるごとにチーム力が高まっていく」という意味では、侍ジャパンにもケミストリーは起きている。オランダ戦では走者を背負いながら1点を守る苦しい展開が続き、キューバ戦では得点してもすぐに失点し、ビハインド・ゲームを跳ね返す重圧との戦いとなった。この精神的重圧を乗り切っての決勝ラウンド進出であり、それまで積み上げてきた組織力を爆発させたのが、二次ラウンド最後のイスラエル戦だった。

 そのイスラエル戦で興味深いシーンが見られた。

 7回裏、先頭打者の坂本勇人(28)が出塁すると、次打者の鈴木誠也(22)がバントの構えを見せた。イスラエルの投手はホワイトソックス傘下のマイナーチームに所属するゴールドバーグだ。そのゴールドバーグは鈴木の顔面近くを襲い、鈴木は寄せた勢いでバットに当ててしまった。投げ損ないか?

 この時点でのスコアは、5対0。侍ジャパンの一方的な展開になっていた。アメリカ球界には、いくつかの不文律がある。ワンサイドゲームで勝っている側のチームが犠打や盗塁などを仕掛けてきた場合、「オレたちを侮辱している。やりすぎだ」と“警告”する意味で、ピッチャーが相手打者の顔面近くに投じるときがある。「アンリトン・ロー」、「シュール・ルール」などと呼ばれているそうだ。ゴールドバーグが鈴木に投じたボールには、そんな意味が込められていたのだろうか。そのすぐ後、一塁を守っていたフレイマンがゴールドバーグに耳打ちをする。「日本は貪欲に1点を取りに行く」と説明されたのか、ゴールドバーグがギアをワンランク上げてきた。

 「1点を貪欲に取りに行くのなら」の“報復”は、8回裏に行われた。3番青木宣親(35)が二塁打を放つと、イスラエルベンチは迷わず、4番筒香嘉智(25)を敬遠した。侍ジャパンの応援団で埋めつくされたスタンドからは大ブーイングが沸き起こったが、「まだ勝負を諦めていない」というイスラエル代表の宣言であり、9回表、最後の攻撃で牧田和久(32)から3点を奪ってみせた。

 「菊池のバントの構えが消沈していたイスラエルベンチに再び火を点けたと思います。日本では貪欲に1点を取りに行くのは当たり前でも、そう解釈されないこともある」(前出・米国人ライター)

 「今回も」だが、侍ジャパンのスコアラーは優秀である。少ない実戦視察から相手チームの攻撃の特徴、選手の長所短所を解析し、小久保監督に届けている。

 しかし、大差が開いたときの野球文化の違いについては報告されていない。また、牧田を始め、救援陣は登板過多なのが気になる。

 「牧田はキューバ戦とイスラエル戦で、投球内容が違いすぎました。キューバ戦では遅いボールを巧みに使っていました。そのキューバ戦でマスクをかぶったのは、チームメイトの炭谷だったので、牧田をクローザーにして準決勝、決勝に臨むつもりなら、バッテリーごと交代させることも考えないと…」(前出・プロ野球解説者)

 スタメンマスクの小林誠司(27)は打撃好調で、ラッキーボーイのような存在だ。こうした最後の選手起用について、小久保監督はチャーター機が米アリゾナに到着するまでに結論を出さなければならない。(スポーツライター・飯山満)

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