「菅野は侍ジャパン合流前、チェンジアップを習得することを公言していましたが、第2戦では投げていないんじゃないかな…。二次ラウンド以降のために隠したというよりも、『使えない』とバッテリー間で判断したんじゃないかな」(プロ野球解説者)
壮行・練習試合の段階でも、スコアラーと小久保裕紀監督(45)たちが話し合っていた相手打線の攻略法のなかに、「変化球の使い方」があったという。2月28日の台湾リーグ選抜との試合がとくにそうだったが、変化球を痛打される場面が多かった。
同試合でマスクを被った大野奨太(30)は外角中心の配球を組み立てていた。他国の代表チームの練習試合を偵察してきたスコラアー陣も「変化球をヒットにするバッターが多い」と付け加えた。威力のあるストレートを投げられるかどうかが重要なポイントに挙げられたが、キューバとの第一戦後、新たな課題も見つかった。威力のあるストレートを投げられる投手のなかにも、WBC使用球が適さない者がいた、と…。
「則本(昂大=26)ですよ。則本の真っ直ぐはスピンが掛かっていて、浮き上がってくるような軌道を見せます。でも、本番になっても、その真っ直ぐが浮き上がってこないんです」(関係者)
第1、2回大会に招集された藤川球児(36)のケースがそうだった。大炎上ではなかったが、浮き上がってくる彼本来の真っ直ぐは投げられず、第2回大会で原辰徳代表監督は、ダルビッシュ有をリリーフに配置換えしている。WBC球でもペナントレースと同じストレートを投げられる投手と、そうではない投手に分かれるようだ。
「変化球にしても、WBC球だとボールの回転数が少なくなる。だから、バットに当てられると、ヒットにされてしまうんです」(前出・同)
菅野と小林のバッテリーがチェンジアップを“温存”したのは、そのためだという。
守っている野手にしてもそうだ。送球でミスをしないように気を配っており、菊池涼介(27)はスナップスローを多用している。過去3大会を知る関係者によれば、WBC球の滑る感触を嫌い、野手はグラブのなかの汗を利き腕側の指先に付け、外野手は芝生を触るなどして湿気を与え続けていたそうだ。準決勝、決勝ラウンドまで勝ち上がれば、その滑る感触はもっと強くなるだろう。「もう、違和感はない」と言い切った投手も、本番に突入してWBC球の怖さを知った者も何人かいる。一戦必勝の決戦は続くが、二次ラウンドでどう再修正していくかが「世界一奪還」のカギとなりそうだ。(スポーツライター・飯山満)
*写真はWBCなど国際試合使用球に違和感をなくすために2014年に導入された統一球。