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懐かしい! 「アラ還」とんねるず石橋の退き芸が冴えわたる番組

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石橋貴明

 振り返れば18年は、とんねるず(石橋貴明&木梨憲武)が斜陽の危機に立たされた1年だった。春の番組改編にともない、およそ32年間もフジテレビで放映されてきた看板番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』が終了したからだ(※前身『とんねるずのみなさんのおかげです』から数えて)。現在の地上波キー局には、“東の大御所”をまとめて抱えられるほどの体力はなく、2人そろったレギュラー番組はとうとうゼロに。とんねるずは、コンビレギュラーが絶えないダウンタウン、バラ売りでも大成功を収めているウッチャンナンチャンとは状況が違うのだ。

 そんななか、ピンで立ち上がったのは石橋。“みなおか”終了と同時に、『石橋貴明のたいむとんねる』を同局でスタートさせたのだ。「大人のノスタルジーを刺激するトーク番組」をコンセプトに掲げた同番組で、石橋の相手を務めるMCはミッツ・マングローブ。適任といえる。

 これまでの石橋と一線を画すのは、“みなおか”時代と異なる声質だ。週の始まりの月曜日、仕事や家事がひと段落した夜11時台に開始とあって、人の睡眠を害さない柔らかトーン。暴れん坊で、前のめりだったかつてのとんねるずと一転して、引きの音量。いわゆる“退きの芸”に徹しているのだ。これを、進化と取るか、退化と取るか。還暦まであと3年となった石橋は、みずから年相応という枠組みに収まっているかのように見える。

 番組は、アラサー以降の誰もが思わず「うわー。懐かしい!」とこぼしてしまう情報がてんこもり。テレビやお笑い業界、ディスコ、漫画、グルメほか、その回のテーマに応じてゲストと知識を披露しあう。一方では、カラオケパブに見立てたセットの中でひたすら歌い、盛り上がるだけの“ささるカラオケ”シリーズもある。さらに、タレントの堺正章、元プロ野球選手の江夏豊を掘り下げるだけという、至極ニッチな回もある。

 いつのまにかアラ還芸人となっていた石橋の、今を切り取っているナイトプログラム。“みなおか”が終わらなければ始まらなかった“たいとん”。番組タイトルに「とんねる」とあえてコンビ名を入れているのは、ウンナン・南原清隆の『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)を踏襲したものか……。
(伊藤由華)

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