「IBD(Inflammatory Bowel Disease)」とは、炎症性腸疾患を指す医学用語で、主に「クローン病」と「潰瘍性大腸炎」のことを指す。いずれも国の指定難病で、現在日本ではクローン病患者が4万人以上、潰瘍性大腸炎患者が17万人以上いて、1990年代初頭に比べ患者数は10倍も増加中だという。そのうち、クローン病は、直腸からの出血、頻繁な下痢、腹痛および腹部圧痛、体重の減少および発熱などの慢性的な症状を伴う。原因は不明で現時点で完治させる方法はなく、一度発症すると長期にわたり再発と寛解を繰り返し、患者の4分の3が切除手術を必要とする病気だ。
鈴木教授は、「日本におけるクローン病には2つの特徴」があるという。それは、10〜20代の若年層が発症することが多いことと、女性に比べ男性に患者が多いこと。この点を踏まえ鈴木教授は「だいぶ周知されてきたが、若年層にもっとクローン病のことを知ってもらいたい。それには、最初に症状を訴える相手である学校の保健の先生や小児科医師にも正しい知識が必要」と訴えた。もし、若年層が腹痛を訴えてきたらクローン病を疑い、血液検査を行うことを医師に勧める。
クローン病の治療としては、従来はステロイド薬の薬物療法と食事療法、重度の病変部には切除手術といった対処方法しかなかったが、2002年に「インフリキシマブ」、2010年に「アダリムマブ」という生物化学的抗体製剤の登場で治療に「大きな変革がもたらされた」(鈴木教授)という。それに加え新たに「ステラーラ(R)皮下注45mgシリンジ(一般名=ウステキヌマブ)」が、今年3月にクローン病の適応追加の承認を取得。発売元のヤンセンファーマIPI事業本部の関口修平・事業本部長は「20年近く生物学的製剤で免疫疾患に貢献してきたパイオニアとして、新しい製剤を通じクローン病の治療に貢献していきたい」と話す。
セミナーでは、クローン病患者の名良之繭子さんが登壇し、鈴木教授とのトークセッションも行われた。「高校生のころから腹痛に襲われていた。血便も出ていたが恥ずかしくて誰にも相談できなかった」(名良之さん)と、10代期の経験を明かす。「どうしようもなくなって病院に行っても、胃潰瘍や過敏性大腸炎、ストレス的なものと言われ、最終的にクローン病と診断されるまで時間がかかった。とくに若い患者さんは重篤な状態になるまで我慢してしまうことが多いのではないか」と話す名良之さん。それに対し鈴木教授は「多感な時期にデリケートな話は親にも友達にもしにくい。そのため若年層に『クローン病』がなかなか認識されていないことを知っていただきたい」と指摘。医療従事者を含めクローン病理解への環境作りが大事だとした。
新薬「ステラーラ」については、「これからの実臨床の現場で数年かけて専門家で議論が深まっていく段階」(鈴木教授)としながらも、従来使われている「インフリキシマブ」「アダリムマブ」には2、3年の使用で約40%の患者に効果減弱例があり、それに対する対応薬としての期待も高まり、治療の選択肢も広がるという。「完治させる治療法はない」とされるクローン病だが、医療現場は日々進歩しており、すぐではなくとも患者にとっての「完治」といういつか来る未来を予感させる内容だった。(編集部PR記事)
http://www.janssen.com/japan/press-release/20170529