問題の文書は、脱会カウンセラーがカルト問題に取り組む弁護士に宛てたファックスである。その弁護士は、親に脱会を勧める手紙などを送付したとして、カルトと呼ばれる宗教団体の信者から懲戒請求を受けていた。その懲戒請求において、信者側から、脱会カウンセラーの保護説得で宗教団体を脱会した元信者の陳述書が証拠として提出された。そこでは保護説得(信者側の言葉では拉致監禁)の実態を生々しく批判する。
「『監禁』された時の衝撃はあまりに大きく、恐怖と悲しみの体験をした結果、精神的な後遺症に苦しむ人は少なくない」
「初め体は硬直して頭は真っ白になり、一瞬何も考えられませんでしたが、この現実を受け止めようと私は必死でした」
「その時のことは、とても苦しかった記憶があります。…ただ、親を苦しめたくなかったのです。そういった意味で××(カウンセリング対象者の滞在施設)での生活は、一見自由に見えますが、『心理的な監禁』だと思いました」
脱会カウンセラーのファックスは、この陳述書提出を受けて送付されたものである。そこでは元信者の親の身勝手さを非難した上で、元信者を以下のように評する。
「○○ちゃんは、自分をチヤホヤしてくれる方へと自然になびいてしまうような人です。また、想像力は思いっきり欠けています」
脱会カウンセラーの活動には、信者の人格を無視した信教の自由の侵害との批判が提起されている。信者をマインドコントロールされた哀れな人間と決めつけ、脱洗脳(デプログラミング)を正義とする傲慢さがあるとの批判である。その当否は簡単に判断できる問題ではないが、脱会カウンセラーの元信者評は、信者側の批判を裏付ける一証左となる。
(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者 林田力)