2010年に設立された現在の女子プロ野球だが、関係者によると「選手、スタッフの全てがわかさ生活の社員」だという。京都フローラ、埼玉アストライア、愛知ディオーネの3球団と、育成球団のレイアをわかさ生活一社が運営しているのだ。毎年多額の赤字を出しながらも選手たちに給料を支払い続けて、ここまで女子プロ野球というブランドを保って来たのは頭が下がる思いだが、一方で、これまで何社か“新規参入”の話はあったものの、「わかさ生活が選手に対して保証している条件のハードルは高い」ことが理由となり、実現することはなかった。
しかし、一社が運営していることにより、シーズン中に行われる唐突なトレード(人事異動)を始め、発表していた試合や企画が一方的に中止になるなど、ファンの不信感は増すばかり。昨年は晩年、女子プロ野球に大きく貢献された故・片平晋作元埼玉アストライア監督の追悼試合を発表しておきながら、当日になって取り止めたことがあった。これにはファンだけではなく、選手たちの会社に対する不信感も爆発。結局、急遽献花台を設置し、試合後には片平氏をチームが悼んだが、シーズン終了後には女子プロ野球発展に尽力した川端友紀が引退という名の退社。今年からエイジェックの女子硬式野球部に選手兼ヘッドコーチとして入部。わかさを離れて現役を続行している。
また、「女子野球の発展」を目指して設立し、「女子野球界の最高峰」であるはずの女子プロ野球だが、女子日本代表チーム“マドンナジャパン”への選手派遣に積極的ではないため、男子の“侍ジャパン”トップチームのような最強代表チームを作れないだけではなく、プロで代表入りを目指している選手にとっても狭き門になっているという問題も抱えていた。今回、わかさ生活が現状を明らかにし新規参入を訴えたのは、“遅すぎる”決断なのは言うまでもないが、再編されるのであれば雇用形態も含めて、本当のプロと胸を張って言えるような新しい日本女子プロ野球機構を作らなければならないだろう。社会人女子プロ野球から脱却しなければプロとは言えない。
現在の女子プロ野球には、加藤優やみなみなど、いわゆる“サラリーマン”ではなければ、もっと女子野球を広められる逸材がたくさんいるだけに、彼女たちにとって“救世主”が現れることを願うばかりだ。
(どら増田)