今季は8月に入り、早々に本塁打を30本の大台に乗せた。今まで以上にフルスイングを心掛けていると言い、「練習から強く遠くに飛ばすことを意識している」というスタンスがまさに結果に表れている。これまでは、中距離打者のイメージが強かった巨人の背番号6は、見事なまでに「和製大砲」へと変貌を遂げた。
もう一つ、トップを争う打点でも80を記録、ヤクルトの主砲・村上宗隆らとしのぎを削っており、得点圏打率が3割3分を超えるという勝負強さも目立つ。自身の記録を本塁打はすでに更新、打点も塗り替えるのは時間の問題か(何れも2010年に記録、31本・85打点)。プロ生活13年目でのキャリアハイは見事としか言いようがない。
また、打率も3割をキープしており、トップ10内に着けている。首位を行く広島の鈴木誠也にやや差を付けられているものの、坂本自身も3年前に首位打者を獲得しており、長打と共にヒットメーカーとしての才能は言うまでもなく、秋までに首位の座を手繰り寄せる可能性も少なくはない。
坂本の活躍を後押ししているのは、今季より加わった丸佳浩の存在も忘れてはならないだろう。こちらも開幕から好調である中、シーズンを通して打順では坂本の後を打つことが多い。長打力を備える丸が後ろにいることで、投手は坂本に対し神経質にならざるを得ない。また、坂本が4番に座った際には、丸がその前と、二人が常に並ぶ打線は脅威となり、どの場面でも投手に対し、これ以上ない程の重圧を与え続けている。
打撃だけでなく、守備でも球界屈指の遊撃手としてもチームを支え、攻守で計り知れない存在感を発揮しており、主将としての頼もしさも誰もが認めるところ。そして今シーズン、チームの5年振りの優勝とともに、坂本個人でも新たな勲章を手にする姿を多くのファンが心待ちにしている。夢のトリプルクラウン、2リーグ制移行後では、セリーグ初となる右打者での三冠王。坂本勇人は今、最も近い位置にいる。
(佐藤文孝)