ソフトバンクの城所、ヤクルトの成瀬など…。実績は十分にある。働く場所を与えれば復活する可能性も高い。
しかし、今オフの阪神はFA宣言したオリックスの右腕・西勇輝を始め、外部補強にも積極的だ。関西系メディアが伝える限りでは投手、野手の両方で外国人選手を獲得する方向で、すでに候補者リストの作成も終えているという。チーム内に目を移せば、FA権を取得した上本の残留も決定した。ドラフト会議でも社会人外野手を1位指名した。これ以上の戦力補強は余剰人員を増やすだけなのだが…。
「過去、トライアウト受験者のなかに『本当にまだやれると思う選手』がいたら、その日のうちにオファーを出します。ドラフト、トレード、FA、外国人選手、この補強を終えて予定していた選手が獲れなかったとき、トライアウト受験者のリストを初めて見るケースのほうが多い」(在京球団スタッフ)
だが、13日のトライアウトを見る限り、阪神スタッフが慌ただしい動きをしていた気配は全く感じられなかった。
「トライアウト選手との交渉は慌てなくてもできるので…」(前出・同)
そもそも、阪神が実績を持つトライアウト選手に強い関心を抱いたとされる理由だが、それは矢野燿大・新監督の選手評価にあるようだ。
「コーチングスタッフを含め、現有戦力に懐疑的なんだと思います。17年シーズンは2位、ほぼ同じ戦力で戦ったのに今季は最下位。勝負どころでの精神的な脆さを痛感しているようです」(在阪記者)
矢野新監督は若手を起用していくつもりだが、彼らはまだシーズンを通して活躍するまでには至っていないと判断し、それを補う目的で外部補強にも興味を示したようだ。
また、矢野体制のお披露目ともなった秋季キャンプだが、球場にかけつけたファンの人数は決して多くない。「金本時代のほうがたくさんいた」(在阪記者)なる声もあり、この点に関しても、フロントは一抹の不安を感じているという。
「金本時代の敗因により、ファンの期待も薄れてしまいました。矢野体制を歓迎する声は多いが、二軍監督からの昇格なので話題性に乏しい。来季の集客数に影響が出るのではないか」(球界関係者)
観客数の低下を防ぐには、やはり「勝つ」しかないというわけだ。
トライアウトの受験経験を持つ元プロ野球選手がこう言う。
「解雇を通達され、野球を続けたい一心でトライアウトを受験したわけですから、拾われたら、どんな役目だってやりますよ。先発でやってきた投手なら、中継ぎはもちろん、敗戦処理だって」
チームのために尽くしてくれる選手は貴重だ。そう考えると、トライアウト選手に着目したのは間違いではなさそうだが、出場機会に飢えた中堅、若手のヤル気をなくてしまうかもしれない。近年、補強が巧くいっていないだけに、「外部補強=優勝」の安易な発想も捨てたほうが良さそうだ。(スポーツライター・飯山満)