その背景には、密かにかつ組織的に月面着陸捏造説をメディアに取り上げさせるよう働きかけ、またネットを通じて捏造説を拡散する集団が存在しているというのだ。
たしかに、アメリカ南部で広く信仰されているキリスト教系の宗教団体には、かねてより科学技術への疑問や危険性を公言し、月面着陸捏造説にも興味を示す組織があったとされている。また、彼らは独自に出版社やケーブルテレビネットワークを運営しており、メディアやアメリカ政界への影響力も小さくはないため、月面着陸捏造説を広める組織として有力視されている。
ただし、アポロ批判の急先鋒だった地球平面協会を始めとして、キリスト教の非主流派や原理主義者には公然と月面着陸捏造説を主張するものもおり、秘密裏に拡散しているというイメージは無い。同様に、ハレ・クリシュナのマントラで知られるインド系宗教団体も、かつて機関誌で月面着陸捏造説を唱えたことがあり、やはり組織的ではあるものの公然と持論を展開している。
また、著名な月面着陸捏造説論者やその支持者についても、そもそも自説を広く公表している上、基本的に独立した存在で、たとえ著書などを通じた相互の影響関係が存在していても、組織だって陰謀を巡らせるようなことはないとされている。
とはいえ、これらの宗教系組織に対して非信徒が抱く秘教的なイメージが、秘密組織であるかのような誤解につながったとの見解もある。同様に、月面着陸捏造説論者についてもオカルトマニア同士のゆるやかなつながりを持っている場合があり、それが外部からは秘密組織であるかのような誤解を招いている可能性はあるだろう。
しかし、月面着陸捏造説がメディアに取り上げられて急速に広まった時期や、捏造説の支持層の偏りなどから、それを秘密裏に拡散する組織が存在するという見方もまた、ある程度の説得力を備えているのだ。
そのキーワードとなるのは、まず「反米」であり、とりわけ「反米帝」であった。
(続く)