上位にひしめく力士たちにとって、賜杯を掴むための追い風となるであろう今回の一件。ただ、これが追い風ではなく、逆風となる可能性がある力士も2名いる。それが横綱稀勢の里と関脇御嶽海だ。
白鵬、鶴竜が出場を取りやめたことで、横綱昇進後初めて“一人横綱”を務めることとなった稀勢の里。賜杯を巡る直接のライバルとなり得る2横綱の欠場は、一見すると稀勢の里にとってメリットが大きいトピックのようにも思われる。
しかし、彼ら2人の欠場によって、大関以下の力士たちによるマークは確実に厳しくなる。また、その背中にかけられる多額の懸賞金も、対戦相手のモチベーションを揚げる厄介な代物となるだろう。賜杯・懸賞金欲しさに目の色を変えた他力士が連日突撃してくる15日間は、長期休場復帰明け2場所目の稀勢の里にとってお世辞にも平坦な道のりとはいえない。
茨の道を歩むことになるのは、大関取り再挑戦へ一縷の望みをかける御嶽海も同様。先場所「9勝6敗」で大関の座を逃したこの関脇だが、今場所は最後まで優勝争いに絡むなどのハイレベルな内容と共に、「三役で直近3場所33勝」をクリアする11勝以上を挙げれば昇進も見えてくる状況となっている。
今回2横綱が欠場となったことで、優勝争い参戦へのハードルは下がったが、その分内容を見る目もシビアになる。今場所は1横綱3大関との対戦が待っているが、1横綱2大関を破るくらいでないと昇進を決定する審判部のお眼鏡には適わないだろう。ちなみに、先場所の御嶽海は3横綱3大関と対戦しているが、大関栃ノ心と大関高安以外の4人には敗戦を喫している。
かたや復活優勝、かたや大関昇進を11月場所で目指すこの2名。実力者2人の不在は、これらの目標にどのような影響をもたらすのだろうか。
文 / 柴田雅人