先の9月場所で賜杯を掲げたのは、15戦全勝の成績を残した横綱白鵬。もちろん、本来ならば今場所でも優勝の最右翼となり得る力士だ。ただ、白鵬は先月に受けた右膝手術後の経過が芳しくなく、2連覇はおろか出場すら危ぶまれている現状。仮に出場に漕ぎつけたとしても、先場所のような強さを発揮できるかは不透明だ。
“前王者”の状態が懸念されるということで、次に候補に挙がるのが鶴竜、稀勢の里の2横綱。両名とも精力的に稽古に励んでいる様子が連日伝えられているが、その一方で、鶴竜には“右足の古傷”、稀勢の里には“長期欠場明け2場所目”という不安もある。
万全の状態ならば、間違いなく優勝争いを牽引する存在となるこの両横綱。しかし、もしそれぞれの不安が現実のものとなるならば、優勝戦線は混沌とした状況になることは極めて濃厚だ。
横綱陣の星が伸び悩むようなことがあれば、豪栄道、高安、栃ノ心の3大関にもチャンスは十分。先場所は豪栄道が「栃ノ心○/高安×」、高安が「豪栄道○/栃ノ心×」、そして栃ノ心が「高安○/豪栄道×」と大関陣同士で星を分け合っているが、この“3すくみ”を打開できるかどうかも勝負の分かれ目といえる。
関脇・小結4名の中で、一番の注目株といえるのが御嶽海。先場所は8日目からの5連敗を含む「9勝6敗」で大関昇進を逃したが、今場所の成績次第ではこの話題が再浮上する可能性も。「三役で直近3場所33勝」という昇進目安をクリアする11勝以上を挙げた上で、最後まで優勝争いに参加することができれば“リベンジ”の目も出てくるだろう。
ここまで5場所における優勝力士の平均成績が「13.8勝1.2敗」ということを考えると、今場所の優勝ラインは恐らく13勝〜14勝。果たしてどれだけの力士がこの数字に迫り、優勝争いを演じていくことになるのだろうか。
文 / 柴田雅人