ただ、角界の歴史の中では、稀勢の里以上のブランクを経て優勝を成し遂げた力士もいる。全てを紹介するとここでは収まらなくなるため、今回は年6場所制が導入された1958年以降のトップ3に絞って紹介していきたい。
対象範囲内において3位となっているのは、第53代横綱琴櫻が大関時代に記録した「22場所」。1969年3月場所(13勝2敗)で自身2度目の優勝を果たして以降賜杯から遠ざかっていた時の大関だが、3年以上が経った1972年11月場所(14勝1敗)で再び賜杯を手中に収めている。ちなみに、この優勝で憑き物が落ちたのか、琴櫻は翌1973年1月場所(14勝1敗)も制し、一気に横綱の座を掴んでもいる。
「24場所」という記録で2位にランクインしているのは、第57代横綱の三重ノ海。場所後に大関昇進となった1975年11月場所(13勝2敗)の初優勝から丸4年、大関陥落、大関復帰、横綱昇進といった紆余曲折の末1979年11月場所(14勝1敗)で2回目の戴冠を果たしている。なお、関脇に陥落しながら大関に復帰し、その後横綱昇進を果たしたのはこの三重ノ海ただ一人だけだ。
堂々の1位となったのは元関脇琴錦だが、その記録はなんと「43場所」。1991年9月場所(13勝2敗)で平幕優勝を果たした後、1998年11月場所(14勝1敗)で史上唯一となる2度目の平幕優勝を成し遂げたことにより、この記録は誕生している。角界に残る数々の記録の中でも指折りの、“規格外”の記録といってまず間違いないだろう。
不屈の闘志で“カムバック”を果たした先人がいることを考えると、稀勢の里にもまだまだチャンスはあるはず。11月場所で「10場所」ぶりの優勝を果たし、真の復活を印象付けてくれることを切に願いたいところだ。
文 / 柴田雅人