関東では松の内も開けてしまいましたが、私は15日の関西の松の内明けまではまだ正月気分ですね。という訳で、新年は干支の酉年にちなんだお話をば。
鳥型未確認生物を代表する存在のひとつに、イギリスのフクロウ男こと「オウルマン」がいます。その名の通りに大人の背丈ほどもある巨大なフクロウで、目撃証言などを総合すると悪魔のように尖った耳とギラつく真っ赤な目、そしてハサミのような鉤爪を持つと言われています(仮面ライダーの怪奇フクロウ男とほぼ同じ)。ところが、発見当初の目撃イラストには描かれていた翼のような腕が、最近のイラストや再現写真では翼を持たない人間の腕として描かれるようになり、着衣もまとうようになりました。
翼を持たないオウルマンの出現は、なにが原因なのでしょうか?
転機となったのは2013年のスコットランド映画Lord of Tears(The Owlman:未公開)とされており、作中にも伝説の魔物として「翼を持たない着衣のオウルマン」が登場します。さらに、同作は映画で用いたオウルマンのコスで廃墟に出没するプロモーションを行ったり、映画版オウルマンのアクションフィギュアも発売するなど、翼を持たない着衣のオウルマンというイメージを深く浸透させました。実際、ネット検索で表示されるオウルマンは、アメコミのヴィラン(悪役)を除外すると映画のスチルやそのプロモーション画像で、こう言ってはなんですが作品がヒットしなかった割に大きな影響を及ぼしたことを示しています。
ところが、翼を持たない着衣のオウルマンはメタルバンド「イン・フレイムス」が2008年にリリースしたアルバムのジャケに登場しており、少なくとも2013年の映画よりも早くから存在していたことは明らかなのです。つまり翼を持つもふもふオウルマンとは別に、翼を持たない着衣のオウルマンもまた、それなりに長く言い伝えられているわけです。
着衣のオウルマンが出現した時期は不明ですが、どうやら1990年代前半か、その少し前のようです。興味深いことに、イタリアのホラー映画「アクエリアス」では「フクロウの被り物をした殺人鬼」が主人公たちを殺戮しており、さらに映画が公開されたのは1987年なのです。ただし、アクエリアスはイギリスで公開されておらず、英語圏の公開はアメリカでの限定上映とビデオリリースにとどまっています(欧州全体ではイタリアやフランスの他、当時の西ドイツやスペインなどでも劇場公開)。そのため、直接のつながりは薄いようにも思えますが、映画公開後の1989年にはイギリスでオウルマンが久々に目撃されており、やはり映画に鍵がありそうです。
もふもふオウルマンと着衣のオウルマン、真の姿はどちらでしょうか?
(了)
*イン・フレイムス アルバム「A Sense Of Purpose」ジャケット