中学の終業式の日。1年B組のホームルームの時間。担任の森口悠子は自分も今月で教師を辞めると生徒たちに告げる。そして約1か月前、学校のプールで事故死した4歳の娘、愛美(まなみ)の死について語りだす。彼女は娘の死の真相について、生徒たちに淡々と語り続ける。そして犯人についても。辞めるのは娘が事故死したからではない。
「愛美は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたからです」
各章はこの教師をはじめ、登場人物のモノローグ形式で進んでゆきます。
1章の森口悠子の語りから始まり、複数の人物の視点で同じ場面が語られることで読者は一歩ずつ事件の真相に近づきます。同時にその後の出来事についても、なぜ語り手がその行動をとったのか、理由がわかってゆきます。犯人の独白の章は、犯行の動機がわかるにつれて、その手前勝手さに嫌な気分になる人がいるかもしれません。娘を失った教師の行動は一種の復讐で、それがストーリーの骨子となっていますが、読んだ後カタルシスを感じることはなく、読者を突き放したようなもやもやが残ります。
著者は第29回小説推理新人賞ほか、ドラマ脚本でも入賞歴がある実力者。
デビュー作となる本作は2009年本屋大賞1位、「ミステリが読みたい‘09年版」3位、「このミステリーがすごい!‘09年版」4位、「週刊文春‘08年ミステリーベスト10」1位と、なだたるミステリー章を受賞。そのラストについては賛否両論あり、それも話題になりました。文庫には中島哲也監督のインタビューも掲載されているので、映画を見る前のガイドにもなるでしょう。
映画公開ということで、読んでおけば飲み会や雑談で今話題のネタをふるとき「知ってる?」とちょっと自慢できる? かもしれません。
(ハマの半ズボン少年記者〜横浜六太 山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou