ここまで読んで、「キャバ嬢って稼げるんだなぁ」と思うかもしれませんが、一般の会社と同じように差し引かれるものもあります。衣装が自前のお店は別として、店から貸与を受ける場合はレンタル料が発生しますし、送りがある店では、そのぶんも引かれます。
以上を踏まえて、どの部分で勝負するか、というのがポイントになってくるわけです。ほとんどのキャバ嬢さんは、「指名」に重点を置いています。ところが、「スキマ産業」に目をつけるキャバ嬢も存在するんです。スキマ産業とは、大企業が進出しない小規模の分野で販路を獲得するビジネススタイルのことです。大企業…つまり、ここでは売れっ子キャバ嬢さんを指します。彼女たちと張り合っても勝ち目はない、と判断したハルカ(20歳)が目をつけたのは、フリーの男性客でした。
自分には、売れっ子キャバ嬢さんたちのように、指名を獲得するテクニックがない。マネしてみようと努力した時期もありましたが、しつこいと受け取られ、逆効果に。そこでハルカは、「その場限りを楽しんでもらう」という営業スタイルにシフトチェンジしました。ほとんどのキャバ嬢は、次回の来店に繋げるため、お客様の連絡先を聞いたり、名刺を渡したりするものです。ですが彼女は、連絡先を聞いたりはしません。その代わり、お決まりのように、どのテーブルでも同じおねだりをするようになりました。
「フルーツ盛り、食べたい!」
フルーツ盛りとは、簡単に言ってしまえばオツマミです。セット料金内で飲めるハウスボトルや、キープボトルのほかに、たいていのキャバクラはオツマミも用意しています。もちろん、居酒屋のようなリーズナブルな価格ではありません。カラアゲが1000円だったり、ピラフが2000円だったりします。その中でも特に高いのが「フルーツ盛り」、オツマミでいうドンペリのような存在ですね。お値段は「時価」にしているお店もあり、相場は5000円くらいします。
ハルカは、決して果物が好きでフルーツ盛りをねだっているわけではありません。彼女にとって重要なのは「フードバック」です。そう、ボトルバックと同じように、フードメニューにもバックが発生します。たいていのキャバ嬢は、次回来店に繋げるためボトルのオーダーを重視するのですが、彼女は誰も目をつけていないフードバックに着目したというわけです。まさにスキマ産業ですね。
もちろん、フルーツ盛りは安くないので、お客様に断られることもあります。その場合は、「じゃあ、キスチョコ食べたい」などとランクを落とします。お客様は、フルーツ盛りを断った手前、キスチョコくらいはご馳走してあげなきゃなぁという気分になります。うまい戦略ですね。こうして彼女は、常連客を作りボトルを入れてもらうスタイルではなく、その日限りの場内指名&フードバックで稼いでいるのです。
難点は、店の従業員に「食いしん坊」と思われてしまうことくらいでしょうか。実際には、太りやすい深夜の時間帯ですし、自分が食べるというよりは、お客様に「あーん」して召し上がって頂いてるとのことでした。(キャバクラ研究家 菊池美佳子)