雑居ビルの裏口で、私はつい感情的になり声を張り上げてしまいました。すると飯島マネージャーはこう返してきたのです。
「まーちゃん、まあ見てなよ。女の戦いはここからだよ。何も言わずにあなたは百花さんを見守ってなさい」
数時間後、素晴らしい売り上げと共にその日の営業は終了しました。私と百花さんはアフターを控えていたので、そそくさとロッカーへ向かいました。すると数分後、私たちが着替え終わると同時にその場に「理恵派」が現れたのです。
「おつかれさまァ。頑張ってたじゃーん」
理恵さんは嫌みたっぷりな笑みを浮かべ百花さんに絡んできました。すると、百花さんの表情が一変したのです。
「お前ら水商売わかってねぇなー」
え!? 今の誰!? 私は一瞬耳を疑いました。天然系で姫キャラの百花さんが、なんと元ヤンの姉御、理恵さんに食ってかかっていったのです。
「はぁ? わかってねぇのはそっちだろキモいんだよいい歳こいてその格好!」
理恵さんも一歩も譲りません。すると次の瞬間「バチーーン!!」と、もの凄い音がロッカー中に響き渡りました。「ガタンッ」という音を立てて床に倒れこんだのは、なんと理恵さんでした。百花さんが強烈なビンタを理恵さんにブチかましたのです。
「てめぇオラァ!!」
理恵さんの罵声と共に、2人は男さながらの取っ組み合いの喧嘩を始めました。髪を引っ張り合い、顔をつねり合い、しまいには頭を壁にぶつけ合うという有様でした。
結局、私たちがいくら止めに入っても収集がつかず、ついに男性スタッフ全員が駆けつけるという事態にまで及んでしまいました。
不幸中の幸いで2人に大きな怪我はなかったものの、その後のお店の空気といったら酷いものでした。そんな環境に耐えられなかったのか「理恵派」に属していたキャストは理恵さん含め、半数以上が店を後にしました。
事件が起きた数日後、マネージャーが私に言いました。
「ね。言った通りだったでしょ? 良かったー、理恵たちが自分から辞めていってくれて。あいつらみたいに性格の悪い女は、この仕事に向いてないよ。はっはっは」
上辺だけでなく、人間的にもイイ女でいなければ、この仕事はやっていけない。そう学んだ出来事でした。
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