この日の高相被告は濃紺のストライプスーツと白シャツにシルバーのネクタイ姿。髪は初公判時と同様に黒髪だったが、整髪料でなでつけているのか少々こざっぱりした印象。長めの襟足と残されたあごヒゲだけが、まだ捨てきれない“やんちゃさ”を思わせた。
証言台に立った高相被告は、初公判時とは違って直立不動、神妙な顔つきで裁判官を見つめ、その言葉にうなずきながら聞き入った。
時折「はい」と答える声はか細く、消え入りそう。はた目には、いかにも反省しており、後悔で身の置き場がないといった風情だった。「そうっすねー」など40歳を過ぎた大人とは思えない気だるい若者言葉で質問に答え、ときには居眠りしているようなしぐさを見せるなどして、検察官をキレさせた初公判とはまったくの別人だった。
初公判から1カ月強の間に高相被告の心境にどんな変化があったのか。初公判時の態度のあまりのひどさに弁護士から指導が入った、というのが当然の見方だが、まっすぐに裁判官を見詰め、小声で「はい」と答える姿は、その優等生ぶりで女優魂を見せた妻の酒井を参考にしたかのようだ。早くもシャバで楽しくキャンパスライフを送る酒井を見て、うらやましくなったのか。
さらに、傍聴席に陣取った報道関係者がいっせいに注目したのは、保釈時にグローブでも隠しきれないほどあった、手の甲から指にかけてのタトゥーが見当たらなかったことだ。初公判時には確認できたが、この日は傍聴席からは確認できず、ファンデーションでタトゥーを消して見せた酒井のマネをしているのでは? との声も上がった。
今後、高相被告が控訴期限を迎える12月11日以降に酒井との離婚の話し合いが行われ、夫婦関係にキッパリ終止符が打たれると見られる。だが、薬でつながった奇妙な似たもの夫婦は法廷劇でも“競演”を果たしているかのようだった。