「吉見は開幕投手を任され(3月26日)、ゴンザレスの初登板は第2戦の27日でした。変則日程となる交流戦を終えない限り、先発ローテーションの組み替えはされません。従って、両投手の直接対決は少なくとも前半戦の間は実現しないでしょう」(関係者)
そもそも、ゴンザレスが吉見を“敵視”したきっかけは、『最多勝』のタイトル争いだった。話は昨年10月に逆上る。最多勝争いが館山、吉見、そしてゴンザレスの3投手に絞られた同3日、ゴンザレスが広島戦に勝利し、館山の15勝に並んだ。館山は前日2日の広島戦で敗れている。この時点で、残り試合数の関係から「館山の単独受賞は難しくなった」と思われたが、3日、ゲームセットと同時にとんでもない情報がゴンザレスの耳に飛び込んできた。吉見が5回から救援登板し(横浜戦)、15勝目が転がり込んだというのだ。
「ウソだろっ!?」
ゴンザレスには中日首脳陣が『個人タイトル』を後押ししたことが理解できなかった。『日本特有』と言えばそれまでだが、落合博満監督が温情でリリーフ登板させたのである。
その後、残り試合数の関係で館山、吉見の2人にだけ『勝ち星』が付き、16勝で最多勝タイトルを分け合った。結果、ゴンザレスは敗れた。
当時、ゴンザレスはこうも語っていた。
「スターター(先発投手)として、タイトルを争っていたのに、リリーバーでは事情が異なるじゃないか!?」
吉見の15勝到達から、3日が経過していた10月6日のことである。ゴンザレスがどれがけ怒っていたかが窺える…。首位打者、本塁打王などのバットマンタイトル争いにしても、日本特有の後押しは過去にいくつもあった。外国人選手にはそれが理解できないのではある。『後押し』の是非はともかく、こんな指摘も聞かれた。
「原監督は昨季後半に右肘を痛めたグライシンガーの戦線離脱は想定していました。ゴンザレスには今年も活躍してもらわないと…。原監督が1年を通じてゴンザレスを冷静にさせるため、直接対決を回避させたとも聞いている」(前出・同)
中日を始めとする対戦5チームは、ゴンザレスの研究にかなりの時間を割いたという。個人タイトルの後押しだけでなく、対戦チームの主軸選手の弱点を見つけ、執拗なまでにそれを突いてくるのも『日本特有』のやり方だ。吉見も首脳陣に「投げろ」と言われたから、立場上、「イヤだ」とは返せないだろう。ゴンザレスも分かっているはず。だが、開幕第2戦の不調は、『日本特有』のダメージをまだ払拭できていなかったからだろうか。