首脳陣がもっとも期待していたのは、1位の福井優也(23=早大)だったはず。ストレートの最速152キロ、バッターの手元で微妙に揺れるムービングボール。コントロールも良く、スライダーなど変化球の精度も高い好投手だが、キャンプでは「大丈夫かよ!?」と聞きたくなるくらい、スロー調整だった。
一次キャンプ終了時、一、二軍の選手の入れ替えが行われるが、福井に関しては“温情”で一軍に残留できたようなものだった。
そもそも、この出遅れは、ドラフト後の11、12、1月に練習らしい練習ができなかったからだと聞いている。通常、新人選手は飛ばしすぎて、監督、コーチがブレーキを掛けるものである。なのに、福井は違う。すでに「自分」を持っているとも言えるが、別メニューの軽い練習しかできない日もあった。お目付役の大野豊・投手チーフコーチ(55)がスロー調整を許したのも、「今、無理をさせたら故障してしまう」と判断したからだそうだ。本領を発揮するのは、早くてもオールスター戦明けではないだろう。
プラス材料だが、故障で昨季を棒に振った大竹寛(27)の完全復活は時間の問題だ。一般論として、故障明けの投手は必要以上に慎重になりがちだ。また、本人が大丈夫と思って投げ込みをした翌日以降、痛みを再発するケースが多々あった。大竹は2日連続でブルペンに入り、かなり力のあるストレートを投げ込んでいた。ここまで、違和感、痛みなどの報告は一切ないという。期待できそうな外国人投手が2人いた。1人は新加入のバリントン(30)。05年の右肩手術以降、伸び悩んでいたらしいが、193センチの長身から投げ下ろすストレートは角度があり、手元でもう1回加速するような軌道だった。また、3年目のソリアーノ(28)も良い。もともと、荒れ球が特徴だったが、そのブレが「ストライクゾーン」におさまるようになった。養成機関『カープアカデミー』の出身だ。ソリアーノが1年間、ローテーションを守れるとまでは言わないが、「谷間」を埋めるだけの力は十分に培われたようである。
サファテ(29)を推すプロ野球解説者もいた。「150キロ以上出る」とは聞いていていたが、そこまで速くないと思う。マエケン、豊田、今村の方が速い。但し、「落ちるボール」は凄い。鋭角に落ちる『縦のスライダー』は武器になる。
昨季はクローザー・永川の離脱がそのままチームの低迷に直結したが、7年ぶりに古巣復帰した菊地原毅(36)、前巨人・豊田清(40)も加わり、救援陣の層は厚みを増したように見えた。新人投手のなかで、一軍登板がもっとも早そうなのが、ドラフト2位の左腕・中村恭平(21)。先発枠を争うという。「ストレートが速い」とは聞いていたが、糸を引くような綺麗な軌道のボールを投げていた。球質も重そうである。しかし、先発ローテーションを守り抜くには「チェンジアップ系の抜くボール」が不可欠であり、変化球の持ち球が多くないと長いイニングは投げられない。そういう器用さはまだ感じられなかった。短いイニングなら、真っ直ぐだけで勝負できそうである。リリーフなら、相当な戦力になりそうだが…。
4番を任されてきた栗原健太(29)が3番にまわるらしい。フリー打撃を見る限りでは、新加入のトレーシー(30)の打球はケタ違いのスピードだったが、3年目の岩本貴裕(24)もレベルアップしている。昨年から取り組んでいたノーステップでの打撃フォームを完全に自分のモノにしており、「3番・栗原、4番・トレーシー、5番・岩本」という打順が予想される。プロ10年目の昨季、初の規定打席到達、3割をマークした広瀬純(31)も順調そうである。
外国人選手が日本で活躍するかどうか、その見極めは難しい。渉外担当者はかなり細かく調査している。それでも、「失敗」の可能性を低くすることはあっても、渉外担当者のレポート通りにはならないのが現状だ。広島は投打ともに外国人選手がポイントになる。その意味では、今季はチームそのものが「やってみなければ分からない」の要素を多分に秘めているというわけだ。(スポーツライター・飯山満)