去る1月15日、阪神のOB組織のひとつ「天地会」の新年会が開かれた。1985年の日本一と、87年の最下位の両方を経験した首脳陣、OBらによって構成されたグループであり、それをまとめているのが当時の指揮官だった吉田義男氏だ。
「吉田氏は阪神OBの中で最も大きな組織をまとめていると目されています。不適切な言い方かもしれませんが、吉田派はOBの中でも最大派閥です。天地会のメンバー以外のOBを従えています」(在阪記者)
伝統球団にありがちな話だが、OB組織が現場に関与してくるのは珍しいことではない。特に阪神は監督人事でもOB幹部に意見を仰ぐことがあるとされるだけに、やっかいな存在ともなっている。
「故・星野仙一氏が阪神監督を引き受けた際、OB組織にものすごく気を遣っていました。外様監督になるので、OB組織を敵に回したら大変だと思い、先に手を打ったんです」(ベテラン記者)
矢野燿大新監督が選ばれた経緯だが、球団関係者によれば、OB組織には相談しなかったという。前任の金本知憲氏を切ると決めた時点で二軍監督だった矢野氏の昇格を念頭に置いていたからだ。
「金本、矢野と続けて外様監督となりました。矢野監督は解説者時代からOB組織とうまくやっていました。矢野監督がどうというのではなく、2期続けて外様の指揮官を据えたことに不満を持つOBもいないわけではありません」(前出・在阪記者)
最大派閥のドン、吉田氏は矢野監督に好意的なコメントを出している。また、金本時代に頭角を現した若手にも期待しており、良好な関係にあるようだ。
しかし、こんな情報も交錯している。「吉田氏はキャンプ視察の際、ブルペンにも足を運ぶ」と――。
「吉田氏は85歳とは思えないほど活動的で、キャンプにも頻繁に顔を出してきました。矢野監督が指導する今年2月のキャンプにも顔を出すようですが、ブルペンを見たいと言っていました」(前出・関係者)
吉田氏のかつての視察はメイングラウンドが中心だった。打撃練習、内野の守備、連携プレーを熱心に見てきたが、自身の哲学からか、ブルペンには足を運んでいなかった。今季から、メッセンジャーが外国人枠を外れる。来日1年目で13勝を挙げた前中日のガルシア、望月、才木、小野、2ケタ勝利の経験を持つ秋山、3年連続の不振から復活を目指す藤浪など、今年の阪神の投手陣は“見どころ”が多い。「ブルペンを見たい」という吉田氏の気持ちも分かる。しかし、例年とは違う行動を予定しているとなれば、「ほかに目的があるのでは!?」と周囲も勘繰ってしまう。
「矢野監督も『何かあるのでは?』と思うでしょう。吉田氏が直接、若手投手に話しかける場面もありそう」(前出・在阪記者)
矢野監督がコケるようなことになれば、OB組織は一気に潰しにかかる。前任・金本氏も最下位転落と同時に、その組織パワーに泣かされたクチだ。
天地会の新年会は穏やかな雰囲気で終わったが、「何事も起こらなければ…」と懸念する関係者は少なくないようだ。(スポーツライター・飯山満)