昨年末には、「楽天・野村名誉監督は結局、ご破算になりそうだ」という情報が、球界の水面下で流れたほどだ。今回、開幕を前にしてやっと一件落着の舞台裏では、野村氏vs球団側の壮絶な綱引きが演じられていた。
監督就任以来、6位、4位、5位とBクラスを続けた野村氏だが、昨年球団史上初のAクラス入り。しかも2位になってクライマックスシリーズ第1ステージを仙台で開催する実績を残し、強く続投を求めていたが、高齢を理由にした球団側の敷いた勇退路線は揺るがなかった。不満たらたらの野村氏は楽天批判を至るところで展開。暴露本の出版まで公言した。
これに対して、楽天は「名誉監督」に祭り上げることで野村氏の口封じを狙った。が、辣腕芸能プロのマネージャーも真っ青の総監督・沙知代夫人が名誉職だけで満足するわけがない。球団側は「年俸1億円、3年間の名誉監督」という、総額3億円の破格の待遇を用意した。が、これがすぐにマスコミに漏れたことで、三木谷浩史球団会長が激怒。「なんで金額まで明らかになるのだ」と。
しかも、名だけでなく、実もある名誉監督話に乗り気だったはずの野村氏が、予告通りに暴露本を出版した。「いや、あれでも内容はずいぶん柔らかくしたんやぞ」とは周囲に語った野村氏本人の弁だが、内容の問題ではない。楽天批判の暴露本を出したこと自体が、問題視されるのだ。球団の口封じ狙いのポスト・名誉監督職用意の意味がなくなるからだ。
そんな楽屋裏のスッタモンダがあり、一時期は楽天・野村名誉監督消滅の危機に直面したのだ。「名誉監督なのに、3年契約というのは、おかしな話だね」とは、巨人・長嶋茂雄終身名誉監督のもっともな言葉だ。異例の期限付き名誉監督は、いよいよご破算かと思われたが、野村氏サイド、球団側も最後の最後で妥協した。野村夫妻にすれば、この不況下で3年間、総額3億円という莫大なお金はあきらめられないだろう。球団側も今になって野村名誉監督が消滅すれば、面目丸つぶれでファンから批判の矢面に立たされることになる。
昨年2位になった効果で、ファンクラブが1万人増になり、5万2000人。Kスタ宮城の年間シートも約1000席上回る6914席を売り上げているという。そんな好景気に水を差すわけにはいかないだろう。そこで、本拠地開幕の27日の西武戦で野村名誉監督をお披露目、球団との蜜月関係をアピールするというシナリオが描かれている。