それにしても惜しい試合だった。王者の黒木は日本と東洋太平洋タイトルを同時に獲得した実力者。世界ランキングはWBCの2位、WBAの3位につけており、虎視たんたんと世界を見据えている。金田は2回、その黒木をダウン寸前まで追い込みながら、直後の3回に右目尻をカットし、試合続行が不可能となってしまったのだ。
金田といえば、もともと現日本ライトフライ級王者の嘉陽宗嗣と並ぶ白井・具志堅ジムの2枚看板だった。2004年には当時、世界ランカーだった大中元気(新日本徳山)を果敢に攻めてTKO勝ち。日本タイトルはもちろん、世界への期待さえ一気に膨らんだ。
しかし、同年の日本タイトル初挑戦でつまずくと、翌年の再挑戦にも失敗してしまう。直後に嘉陽が東洋太平洋王者に上り詰め、06年には同門の山中大輔が日本スーパーバンタム級タイトルを獲得。金田の影はすっかり薄くなってしまった。
「僕以外のタイトル挑戦者は、みんなチャンピオンになった。僕だけが獲れないのは、やっぱり悔しいですね」
ホープと呼ばれながら、タイトルを獲得するまでに苦労を重ねた選手は過去にたくさんいる。現WBC世界スーパーバンタム級王者の西岡利晃(帝拳)は、5度目の挑戦で世界をつかんだ。たとえ日本といえども、そう簡単にいかないのがタイトルマッチなのである。
「ジムではベテランの域に達したけど、とにかく形になるものを残したい」と切実に語った金田はまだ26歳。腐らず、諦めずに続ければ、必ずまたチャンスは巡ってくるだろう。