田中角栄の出身地である新潟県柏崎市で開かれた式典には、長女の田中真紀子らが出席し、セレモニーは盛大に行われた。
さて、そんな田中角栄は生前、顔や声が特徴的だったことから、モノマネされやすい人物として有名な存在だったのだが、田中角栄のモノマネに関してちょっとした笑い話が残っている。
1981年8月8日、東京都荒川区で41歳の中年男が捕まった。この男は8日午前、西日暮里駅の構内で近くに座っていた会社員の持っていたダンゴ(1500円相当)を盗んだ罪で現行犯逮捕されたのだが、警察官はこの男の顔を見たとき思わず「ギョッ!」と驚いたという。なんとこの男、顔が田中角栄に瓜二つであったのだ。
田中角栄は当時は、ロッキード事件関与の疑惑が持たれていた時期であったものの、流石にダンゴ泥棒をするほど落ちぶれてはおらず、もちろん別人ではあったのだが、見れば見るほど田中角栄にそっくりな顔をしていたという。
見た目だけは元総理大臣によく似た男。この男は都内にあるキャバレーの元支配人で、業務の傍ら田中角栄のモノマネをしてお客さんを楽しませていた「名物支配人」だった。東京に来る前は北海道の旅館やクラブ、観光地を転々とし、あらゆる職場でも田中角栄のモノマネをしてお客さんを楽しませていたという。
「田中角栄のモノマネをする従業員が北海道にいる」
そんな噂を耳にした大阪のテレビ局が取材に来たことがあったほか、1977年には、とあるモノマネ番組で優勝したこともあるなど、素人ながら大阪ではそこそこ有名な人物であった。
なお、男がダンゴを盗んだ理由はお金に困っていた、というわけではなく、ダンゴが愛媛県松山市で作られたもので、男は以前、四国に住んでいたこともあり、「懐かしくてつい盗んでしまった」と動機を語っていた、という。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)