日本とドイツの教育で最も異なる点の一つは、おおよその進路の決定年齢だろう。ドイツも日本と同じように、9年間の義務教育が定められている。日本では多くの場合、高校卒業後に大学進学か就職か決定するのに対し、ドイツでは、日本の小学校にあたる4年間の初等学校を卒業した時点で、将来大学に行くか専門職に就くかを決めなければならない。将来を決める子供の年齢は10歳だ。
ドイツでは、大学に行く選択をすると初等学校を卒業後、大学受験に向けて8年間の教育を受ける。また、専門職に就く選択をすると初等学校を卒業後、5年間の専門教育を受ける。専門職を選んだ場合、目指す職種によって学校が分かれるため、美容師やパン職人など具体的な職業も10歳の時点で決めなければならない。また大学に行く選択をした場合も、一定の成績をクリアしていなければ、初等学校の次に通う、大学進学の予備学校に進学できないため、初等学校のうちから成績を意識しなければならない。
10歳で将来を決めることは難しいイメージもあるが、州によって異なるものの、初等学校では1年生の段階から手芸や料理の授業を取り入れるなど、子供たちに興味のあるものを見つけてもらいやすいようなシステムがある。とはいえ、子供自身だけで将来を決定することは難しいようで、大学に行くか、就職するかは親の助言が大きいようだ。なお、選択後に変更することは可能である。しかし大学進学を選んだあとに、専門職に変更することは容易なものの、専門職から大学進学に変更することは極めて困難だという。
さらにドイツの場合、義務教育中は“教科書がおさがり”という点も日本と異なる。日本では学年が上がると新しい教科書が配られるが、ドイツの場合、教科書は先輩たちが使ったものが回ってくるのだ。カリキュラムが変わったり、あまりにも汚れているものは学校の判断で新品に交換されるが、ほとんどの生徒が何度か使われた教科書を使う。メモが残されていたり、答えがすでに記入されている場合も多い。教科書を再び使うことに対しては、リサイクルの意味も強いそうだ。
大人になっても「自分は将来何をしたいのか」分からず悩む人は多い。しかしドイツでは10歳の時点で難しい決断をしなければならず、日本より子供に多くの負担がかかっているのかもしれない。