今回の結果を受け、ネット上には「怪我なく千秋楽まで乗り切ってよかった」、「10勝は御の字、よく頑張った」といった安堵の声が数多く挙がっている。しかし、その一方で「あくまで今回は延命しただけ」、「これじゃ到底復活とは呼べない」といったコメントも少なくない。
「8場所連続休場明け」という観点から見ると、10勝5敗という成績は“及第点”かもしれない。ただ、彼の地位が「横綱」であるということを考えると、ギリギリの2ケタ勝利は“落第点”と言わざるを得ない。来場所で優勝、またはそれに準ずる成績をマークしてこそ、真の復活と位置付けることができるだろう。
では、その来場所である11月の九州場所で、稀勢の里がこの“ミッション”を遂行するためには何が必要なのか。人によって様々な考えがあるだろうが、筆者はとにもかくにも立ち合いの修正が必要であると考えている。
初日の勢戦から千秋楽の豪栄道戦まで、全15番を戦い抜いた今場所の稀勢の里。しかし、この中で立ち合いが成功したのは6番のみ。その他の9番は全て失敗に終わっている。
稀勢の里にとって成功といえる立ち合いは、相手の懐に左を差し組み止める形にすること。9日目の栃ノ心戦、12日目の御嶽海戦、14日目の鶴竜戦では、これがしっかりとできていたことで相手の攻めを凌ぎ、粘り強く自分の形に持って行けた。
しかし、残る9番ではこれが封じられたことにより、勝敗に関わらず苦戦を強いられた。また、9番中6番は相手の突き押しをまともに食らっており、立ち合いの馬力がある力士への苦手意識も浮き彫りとなっている。
いかにして左を差すのか、差せなければその後どのようにカバーするのか。来たる九州場所に向けては、これらをどこまで修正できるかが大きな鍵となりそうだ。
文 / 柴田雅人