殊勲の上村騎手が「GIでこんなに早い段階で勝利を確信できるなんてなかなかない。最後は勝利を噛みしめるぐらいの余裕があった」とレースを振り返ったように、まったく危なげのないGI初Vだった。
スリープレスナイトは絶好のスタートを切ると、3角では理想通りの5、6番手をキープ。ペースも前半3Fが33秒後半とGIにしては緩く、先行馬には願ってもない展開になった。4角過ぎで前を行くウエスタンビーナス、エムオーウイナーの脚色があやしくなると、あとはスリープレスの独壇場。急坂をものともせず、およそ牝馬に似つかわしくない豪脚で突き抜けた。
「4角でひと呼吸入れられたし、直線に入って50メートル過ぎぐらいで追い出すとうまく弾けてくれた。キンシャサが外からくるのは予想していたので、それに絡まれることだけ気をつけた」と上村は冷静にレースを分析した。
管理する橋口師は「頭に描いた通りの競馬ができた。ここまできたらいたずらに千四とかは使いたくない。千二のスペシャリストを目指したい」と宣言。今後については「芝、ダートともに走るので、ドバイ(ゴールデンシャヒーン)が頭に浮かんでいる」と世界挑戦を明言した。
橋口師はこの日が63歳の誕生日。GI初勝利となった上村とともに、生涯忘れられないメモリアルデーとなった。
一方、4歳牝馬スリープレスの勝利でスプリント戦線の新旧交代も明確なものとなった。春の短距離王ファイングレインは見せ場なく10着に惨敗し、スズカフェニックスは4着に踏ん張ったとはいえ、ピークを過ぎた感は否めない。他に掲示板に載った馬を見ても、3着は4歳馬ビービーガルダン、5着には3歳馬アポロドルチェが入り、6歳以上の高齢馬は軒並み下位に沈んだ。結果的に昨今のスプリント戦線特有の浮き沈みの激しさを如実に表す一戦となった。
現時点で一歩リードしたスリープレスも、もちろん安閑とはしていられない。短命政権で終わるか、それとも一時代を築くか。その答えは神のみぞ知るところだ。