−−最近、女性にも「汗のニオイが気になる」「なんだか酸っぱいニオイがする」という人が増えていますが、これっていわゆる“加齢臭”なのでしょうか?
西村 中高年に多い“加齢臭”とはまた違い、汗に含まれるアンモニア成分が原因となる“疲労臭”の可能性が高いですね。
−−“疲労臭”ですか!? 初耳ですが、“加齢臭”とどう違うんですか?
西村 加齢臭の原因は、皮脂腺から出る脂肪酸・ノネナールの酸化です。皮膚を清潔に保つことや、脂っこいものを摂り過ぎないことで抑えることができます。一方、“疲労臭”は、血中のアンモニア成分が原因。汗と一緒に体外に出て、揮発することで発生します。
−−アンモニアが原因だから、オシッコのようなニオイなんですね。
西村 ええ。通常なら、アンモニアが増え過ぎた場合、肝臓で解毒されます。そのため、汗に含まれるアンモニアもごく微量のため、揮発してもニオイを感じません。体内で処理しきれなくなると、汗に含まれるアンモニア値が高くなり、独特の刺激臭を発することになると言われています。
−−アンモニアを処理しきれなくなるのはなぜなんでしょう?
西村 肉などの高タンパク質な食材は、消化吸収され、体内で代謝される過程でアンモニアを発生します。肝機能が低下し、アンモニア解毒を担うオルニチンサイクルの働きが低下してしまうと、アンモニアが処理しきれなくなる可能性があります。また、激しい運動で筋肉が分解される時にもアンモニアは発生しますし、一方、お酒の飲み過ぎなども肝機能の低下に影響するので注意が必要です。
−−なるほど。だから、年齢に関係なくニオってしまう、と。
西村 加齢臭とは違い、“疲労臭”の可能性は、若い女性にも十分あります。また、アンモニアはニオイの原因になるだけでなく、疲労の原因物質とも言われていますから、体内に増えることでだるさや疲労感が増してしまうのです。
−−疲労した時に出るニオイだから“疲労臭”なんですね! とはいえ、汗そのものが臭うなら、入浴やデオドラント対策では対処しきれないですよね。一体どうすればいいんでしょう?
西村 ニオイのもととなるアンモニアを体内できちんと処理できるよう、暴飲暴食を控えたり、オルニチンを摂取するなどで肝機能をアップさせることが大切ですね。
−−お話を聞いて、疲労臭のメカニズムは理解できました。それでもやっぱり「オルニチンを飲むだけで効くなんてホントなの?」と思ってしまうんですが…。
西村 それについては、2011年の時点で、加齢臭などにもくわしい五味クリニックの五味常明院長の監修で、効果を検証する実験が行われています。
−−どんな実験をしたんですか?
西村 19名の成人男性を対象に、オルニチンを摂取させたグループとプラセボ(偽薬)を摂取させたグループをつくり、両者に一定の速度でエアロバイクを漕ぐ運動をしてもらいました。運動前と運動終了後には、採血するとともに、手にはめていたビニールの手袋から汗や皮膚ガスを回収し、それぞれのアンモニア濃度を測定しました。
−−運動で疲れる前と後のアンモニアの量を測定したわけですね!
西村 ええ。実験の結果、オルニチンを摂取したグループのほうが、運動後の汗や皮膚ガス、そして血液中のアンモニアの濃度が低く抑えられている事が判りました。つまり、オルニチンが肝臓のアンモニア解毒を活性化することで、体から発散されるアンモニア臭を低減させる効果があると考えられるのです。
−−ホントに飲むだけで疲労臭を抑えられるとは驚きです。数値に勝る信憑性なし、ですね!
西村 疲労臭については、本人が気付いていないケースも多いんです。汗を拭いたタオルを放置していて、いつもより酸っぱい臭いや、鼻につく臭いを感じたら、疲労臭を疑ってみてもいいかもしれません。
−−自分が気付かないまま、周囲の人に「クサい!」なんて思われていたらショックです。
西村 ニオイの問題は、周囲が気を遣うあまり、本人は知らないままになってしまうケースも少なくないでしょうね。
−−特に女性の場合、デオドラント製品などで気遣っているだけに、気付かない人も多そうですね。「自分には関係ない」って思ってしまうかも。
西村 オルニチンを飲むことは、疲労臭の対策となるだけでなく、女性にとってプラスになる部分がたくさんあるんですよ。成長ホルモンの分泌を促してくれるので肌へのアンチエイジング効果が期待できますし、脂肪の分解をアップする効果もあるので、ダイエット補助にも向いていると言えます。
−−え〜っ!! それホントですか!?
西村 いわゆるコラーゲンドリンクなどにもオルニチンは使用されています。また、オルニチンは筋たんぱく質の合成を促す働きがあるため、男性の場合は、筋肉量を増加する効果も期待できますね。実際、アメリカではボディビルダー向けのサプリとして販売されていますから。
【参考ページ】
http://ornithine.jp/lab/decreased.html
■「オルニチン」とは…
肝臓で活躍するアミノ酸のこと。もともとヒトの体の中に存在するアミノ酸で、血液に溶け込んだ状態で体内を巡っているが、肝臓では有害物質であるアンモニアの「解毒」を担っている。アンモニアは生命活動のエネルギー<ATP>の産生や、脳を動かすエネルギー<グルコース>の生成を妨げる物質。オルニチンはそうしたアンモニアの解毒を助けることにより、スムーズなエネルギー産生にも貢献していると考えられている。また、「肝臓に良い食材」として認知度が高いシジミは、オルニチンの含有量が飛び抜けており、その効果のカギこそがオルニチンであると考えられている。