エンゼルスの地元紙・オレンジカウンティレジスターは4月上旬に「アリゾナの球団施設で実戦的な打撃練習に入る」と伝えていた。チームを指揮するブラッド・オースマス監督も報道を否定することはなく、結局、5月上旬に復帰することとなったが、指揮官は「即、メジャー復帰はアブナイ」とも感じていたようだ。
米国人ライターがこう言う。
「大谷が右肘にメスを入れ、今季の投手出場が難しいことは既報通りです。オースマス監督も『二刀流の人気選手』の将来性に配慮し、無理をして復帰時期を早めるようなことはしないと公言してきました」
初期の打撃練習では傘下マイナーチームの投手数人をアリゾナに向かわせ、大谷の練習パートナーを務めたようだが、気になるのは、オースマス監督が大谷のことを話していたときの表情だ。二刀流ではないが、打者・大谷の復帰は喜ばしいはず。だが、オースマス監督は言葉を選ぶような物言いで、アリゾナでの練習内容についてはほとんど語らなかったそうだ。
「今年のエンゼルスはア・リーグ西地区で最下位争いを繰り広げるありさま。ご機嫌ななめなのは仕方ありません」(前出・米国人ライター)
チームに大谷が復帰すれば、戦力的にもプラスになるだろう。その明るい話題にもご機嫌ななめだったのは、低迷するチーム事情だけが理由ではないようだ。
「大谷は今春のキャンプでは別メニューでしたし、実戦からも遠ざかっています。手術箇所は順調に回復しているようですが、マイナーのピッチャーが投げるボールを打っても、メジャーリーグの試合にすぐに出られるとは限りません。大谷が『真の戦力』となるのはもっと先の話だと考えているからでしょう」(前出・同)
マイナーリーグとメジャーリーグでは、ピッチャーのレベルが違う。メジャーの試合に出場しても、しばらくは一線級のピッチャーのスピード、キレ、鋭角な変化球についていけないというのが、エンゼルス首脳陣の考え方だ。
また、こんな情報も聞かれた。
「大谷が受けたトミー・ジョン手術は体の別の箇所から肘に靱帯を移植するもの。本人は治ったと思い、全力で腕を動かしてみたら、また痛みが再発した、なんて選手も過去にはいました。大谷は一日も早く復帰したいと頑張っており、周囲がブレーキをかけている状態です」(特派記者)
大谷を試合に出場させれば、再発の危険性を伴う。かといって、慎重になりすぎると、実戦感覚を取り戻すのが遅れてしまう。その“さじ加減”が難しく、オースマス監督の悩みのタネはそのあたりにもあったようだ。
「大谷は打者としてよりも、ピッチャーとして一日も早く復帰したいと思っています。オースマス監督の目の届くところにいさせて、注意しないと、勝手にピッチング練習を始めてしまうかも」(前出・同)
復帰しても、当面は「様子を見ながら」の出場になりそうだ。もっとも、エンゼルスが低迷する状況から抜け出せなければ、「最下位争いから抜け出すために大谷に無理をさせた」なんてバッシングも地元紙から浴びせられるかもしれないが…。
(スポーツライター・飯山満)