消化試合とはいえ、タイトル争いの行方が注目された巨人の最終戦は、22日に東京ドームで開催された(横浜戦)。ここで、巨人・原辰徳監督(53)が最多勝を狙う内海投手を先発させれば、「さすが巨人」と言われるところだったが、先発したのは澤村拓一投手(23)。澤村投手には200イニング投球回が懸かっており、原監督はまずはその記録達成を優先させたのだ。
澤村投手は200イニング投球回ちょうどの3回1/3を投げて降板。セ・リーグの新人では、67年の江夏豊(阪神)以来の200イニング投球回を達成したが、村田修一内野手(30)にソロホームラン2本を打たれ自責点は2。防御率は1点台から2点台に上げてしまい、66年の堀内恒夫(巨人)以来となる新人での防御率1点台は逃した。その後、山口鉄也投手(27)が2/3回を投げ、満を持して内海投手が5回表から登板。
19日の吉見投手と同じ回からの登場となったが、違うのは得点経過。吉見投手は自軍のリードがあったが、この場面は0-2で巨人のビハインド。投げている間に自軍が逆転してくれなければ、内海投手に白星は付かない。そして、1-2で巨人がリードされていた9回裏に奇跡が起きる。すでに内海投手には代打が送られ、この回に逆転しなければ、内海投手が勝ち投手になることはできない。無死満塁で指名されたのは代打・長野久義外野手(26)。首位打者争いのトップに立っていた長野外野手は、打率を落とさないために、スタメンからはずれていたが、ライバルのマット・マートン外野手(阪神=30)が、この日この時点で、3打数無安打で打率を下げたことを受けて登場。長野外野手はここで代打逆転サヨナラ満塁本塁打を放ち、巨人が逆転勝利。これで、内海投手の最多勝タイが決定、長野外野手自身も首位打者をグッとたぐり寄せた(24日の阪神最終戦でマートン外野手が逆転する可能性も残されている)。まさしく、絵に描いたようなストーリーで、原監督はニンマリだったに違いない。
さて、得点経過の違いこそあれ、吉見投手同様に救援で最多勝をもぎ取った内海投手だが、吉見投手を“インチキ最多勝”と批判した人たちは、内海投手も同じく“インチキ”と呼ぶのだろうか? 日本のプロ野球界では消化試合で個人タイトル獲りに、監督が協力するのは日常茶飯事。別に彼らだけではない。なにより、2人が上げた今季の成績は立派なものである。
(落合一郎)