日本で生まれ育った人には、ピンとこないかも知れないが、冷静に考えてみると、お盆は何とも不思議な習慣なのだ。
お盆とは先祖や亡くなった人たちが、あの世で苦しむようなことがないように、供養なるものをしなければならないという習慣。
この習慣は、真夏に行われるのであるが、考えてみればちょっとコワイ。なんといっても亡くなった人たちの霊が、いっせいに家に帰ってくるのだ。これはコワイ。まるでホラー映画そのもの! 姿が見えたらゾンビ映画そのもの!
しかも、その霊たちはお盆の数日間家に居つくのである。ちなみに、この霊は、ちゃんと“迎え火”を、焚いて導いてやらないと家にやってこれないし、“送り火”を焚いて送ってやらないと帰らないというやっかいな霊なのである。
ここで考えてみてほしい。この霊は、ご先祖さまであるはずなのだ。近いところでは、おじいちゃんおばあちゃんあたりだったりするのである。それが、自分の住んでいた家に来れないし、帰れないのだ。
おかしいではないか! 死んじまったすべてのご先祖様が、老人ボケの徘徊癖があるわけでもなかろう。迎え火送り火をしないと、ご先祖様の霊が祟るというひともいるが、そもそもご先祖様がなんで子孫に祟るんだ!?
子孫もそんなに大切なご先祖なら、なんでお供えものがナスやキュウリに割り箸をさしたものなんだ???
それにこの国の人々は…なぜかこの季節の夜に、輪になって踊りだすのである。ある種の生物がある季節にいっせいに、繁殖のためにいっせいにダンスを踊ったりするものがいる。同じように、この国の人たちは、真夏のある夜に、集団で踊る本能でもあるのだろうか?
この理不尽な、先祖だという霊たちからの恐怖を忘れるために踊っているのだろうか???
と、このお盆という習慣をまったく知らない人が観たら、かくのごとく思うのはないだろうか?
わたしたちが何気なく思っている習慣や風習も、違う角度から見ればなんとも不思議なことが多いのかも知れない。
巨椋修(おぐらおさむ)(山口敏太郎事務所)