8月1日、巨人が球団事務所でスカウト会議を開き、高橋昂也投手(花咲徳栄・3年)を『Aランク』に位置づけた。埼玉県大会決勝戦では、同投手の視察で7球団が訪れたのは既報通り。巨人は堤辰佳GMも足を運び、「力のあるボールを投げる。高校生の左であれだけの投げられる投手はなかなかいない」と唸っていた。
地方大会とはいえ、強豪埼玉県において、高橋は6試合37イニングを投げ、防御率「0」。与四球は僅か「2」で、奪三振率12.6の驚異的な数字を残している。やはり、決勝戦を視察した中日・正津英志スカウトも「甲子園で上位に進めば(各球団の)1位(指名候補)になる可能性もある」と語っていた。この時期、巨人が1位候補名を示唆することはない。あえてその名前を出すことで、1位入札で競合することを嫌う他球団を牽制する意味合いもあったのだろう。
「全体的に見て、今年の高校生投手は順調に成長しているような印象も受けました。高校生に指名が集中するドラフトになるかもしれない」(在阪球団スカウト)
今年は即戦力と称される投手が少ない。創価大の田中正義、東京ガス・山岡泰輔などが高く評価されているが、各球団が1位指名で即戦力投手と獲得しようとした場合、「2、3人だけに指名が重複する」とも予想されている。競合し、当たりくじを逃した場合、本命と「外れ1位」の力量差が大きいとも伝えられるだけに、「だったら、将来性で高校生を」の見方も強まってきたのだ。
「履正社の寺島成輝(左投手)は一軍戦力になるまでさほど時間が掛からないと思う。寺島については『いまだ全力投球していないのではないか』という評価もあるくらいで」(前出・同)
このほかにも、横浜・藤平尚真、木更津総合・早川隆久、履正社・山口裕次郎、創志学園・高田萌生といった投手も高く評価されているという。問題は彼らの“進路希望”だ。
「高橋昂也クンと比べても引けを取らない関東圏の左腕投手は早大進学が噂されています。その学校の監督さんが同大学に太いパイプをもっているので…」(球界関係者)
甲子園の予選が始まったころから、有望高校生が「進学」をほのめかすようになってきたそうだ。プロ志望届を出すと見ていた投手が一転したケースも多々見られたという。
「現時点で、進学かプロ志望なのかは『伝聞』でしかありません。スカウトである以上、確かなルートから進路に関する情報を得ていますが、急に変わる可能性もあるので…」(同)
甲子園大会中、スカウトは数人に絞り込んで視察をする。地方予選も見てきたので甲子園大会はあくまでも「確認」だが、今年はどういうわけか、“プロ志望を漂わせる”投手が少ないという。
「急成長した投手も多い。急成長というのは評価が難しい」(前出・在阪スカウト)
高校からプロに飛び込んで成長した選手もいれば、大学に進学してスケールアップした投手も多い。どちらを選択するのか、それは本人が決めることだが、今年のスカウトは「急成長の中身」「進路状況」を考えながらの視察となりそうだ。
※巨人堤辰佳GM、中日正津英志スカウトのコメントは共同通信等から引用いたしました。一部敬称略。