その中の1つが、イラストレーター・みうらじゅんの自伝的青春小説を映画化した『色即ぜねれいしょん』である。当時、彼は同映画の完成披露試写会にて、リポーターに声を荒げたことがあった。
同映画は、主人公が「フリーセックス主義者の集まるユースホステルがある」との噂を聞き、仲間と旅に出るという物語だったことで、リポーターが共演者の臼田あさ美に対し「フリーセックス派?」といったセクハラ質問を連発。これに表情を曇らせたのが、同席していた峯田だった。彼はその質問をしたリポーターに「どういう意味で聞いたの?」と、約20分にも渡って激怒し、問い詰めるという男気をみせたのである。
そんな強い正義感を持つ峯田は、ドラマの中でも優しさ溢れる人物を演じている。今回、彼が『ひよっこ』で演じている宗男は、ある人物を意識しているという。
「宗男は亡くなった僕の祖父とほとんど同じ世代です。僕は、好きな子ができると相談するくらい、なんでも祖父に話しました。明るく、子ども心もあり、音楽が大好きな人。若いころの写真を見るとエレキギターを持っているし、バイクにも乗っていた。不思議なほど宗男とリンクしていて(笑)。だから、祖父を演じてみようと思ったんです」
そんな祖父との思い出を峯田は過去のインタビューで以下のように語っている。
「俺が高校3年、ちょうど学園祭ん時だったんですけどね。おじいちゃんが入院してて。もうね、お医者さんは家族には言ってたの『癌ですから』って。で、手術もしたんだけど転移してて」
家族は、祖父の死期が近いことを医者から伝えられていたが、その事実を本人の前で話さないよう、峯田は母親に口止めされていた。そんな時、学校帰りに病室へ行き、祖父の肩を揉んでいた時のこと。祖父から「おまえ、なんか俺に隠し事してるだろう。おじいちゃん、わかんだよ。俺はもう少しで死んじゃうんだなあ」と尋ねられたという。
「『そんなことねぇって! お医者さんももうちょっとで退院だって言ってたよ』みたいなこと言っちゃったんだよね。したら、おじいちゃんが『ああ、そうかそうか。和伸、おまえ将来どうすんの?』『いやー、(実家の)電気屋継ぐんじゃねぇかなあ』みてえな。やっぱ少しでも安心させたかったの。任せてよおじいちゃん、て。したらおじいちゃんは『和伸、おまえは自分のやりたいことを思いっきりやったほうがいい』って。その時になんか、涙ボロボロ出てきて。なんか知んないけど。そっからすぐおじいちゃん亡くなっちゃって……」
その年の冬、東京に海外ロックバンド『グリーン・デイ』が初来日する。峯田は学校の授業を休んで予約の電話をし、チケットを取った。そしてその時の体験が彼の人生を変える。
「山形でもね、ユニコーンとか観に行ったよ! 市民会館とか。そんなスケールじゃなくて、すごい人いっぱい集まってんの。で、いきなりオープニングでハイスタが出てきて。『うーわー!!』と思って。で、そっからグリーン・デイのライブ観て。すごい体験だったんでしょうね。そん時に初めて『俺、バンドやりてえ!』と思ったのね」
こうして峯田は、祖父の残した言葉の通り、バンドという自分のやりたいことを見つけた。そして今、エレキギターを弾き、バイクに乗るという、まさに祖父のような宗男を偶然にも演じ、幅広い層から称賛の声を集めている。
今後も、峯田にしか演じることができない個性的な役柄で、多くの人を魅了していくに違いない。
【参考】
・『ひよっこ』公式サイト
・ORICON NEWS 2009-04-21
・ROCK IN JAPAN VOL.274
(文・柴田ボイ)