関大対創価大の一戦(準々決勝)は、1対1のまま延長戦に突入。両校は大会ルールに従い、一死満塁から試合を再開。創価大学がそのアドバンテージを生かし、「1点」をもぎ取り、準決勝へ進出−−。
試合前の下馬評だが、創価大の圧勝を予想する声も多かった。一回戦をコールド勝ちした打線の破壊力を見せつけられたからだが、この試合の主役は同大学打線ではなかった。対戦した関大の先発・石田光宏投手(2年生)だった。試合後のインタビューで語っていたが、やはり創価大のコールド勝ちした一回戦を指し、「丁寧に低めを突いていけば」と打ち損じを誘うピッチングで強力打線を『1失点』に抑えた。味方野手もその好投に応えるように右翼手がフェンス際の大飛球を好捕、7回一死一塁の場面では、勢いを失った高いゴロにも対応し、素早い動きで併殺プレーを成立してみせた。
ゲームセットの瞬間、スタンドがざわついた。通常の野球ルールで延長戦を戦っていたら−−。石田投手の好投をもっと観たいと思ったファンは、両校の整列前に席を立ってしまった。『タイブレーク制の非情さ』もあるが、消化不良な感もしないではなかった。
高野連の技術・振興委員会は「選手の健康管理と大会のスムーズな運営方法を…」(相沢孝行委員長)と、導入を検討した理由を説明してきた。ならば、この試合のデータも検討材料に加えてほしい。石田投手は『一死満塁』の状態からマウンドに上がり、スクイズも警戒し、かつ牽制球も混ぜ、時折、マウンドを外すなどし、打者との心理戦を重ねていた。勝利した創価大学・田中正義投手(2年生)もそうだった。一球も気を抜けない場面の連続で、「どちらが勝っても、精神的疲労は相当なもので、次試合までダメージが残るのではないか」と思われた。
田中投手は同18日の準決勝では3イニングを投げているが、「中1日」とはいえ、休養日がなければ、高野連の言う『健康面』にも影響を及ぼしていたのではないだろうか。こんな緊迫したマウンドを10代の球児に上がらせるのも残酷だと思った。
高校野球の地方大会一回戦を取材・観戦した際、炎天下で戦う代償も目の当たりにさせられた。足をつってベンチに下がる球児や、暑さで集中力を失って審判に声を掛けられる内野手もいた。これらは熱中症や脱水による初期症状だと聞く。高野連がタイブレーク制導入の理由を聞かれる度に「選手の健康管理」を口にする。対策は必要である。だが、明治神宮大会でタイブレーク制を経験した高校から聞き取り調査を行うなどし、その功罪をもう一度整理すべきではないだろうか。(了/スポーツライター・美山和也)