阪神タイガースの来季監督に、球団OBの岡田彰布氏の就任内定が伝えられている。2008年シーズン以来15年振りの「再登板」となり、岡田氏自身では2012年にオリックス監督退任以来の現場復帰だ。
1985年の「阪神フィーバー」の立役者の一人であり、選手、監督としてもタイガース史にその名を刻んできた岡田氏。しかし、次期監督としてその名が紙面を賑わせた際には、やはり違和感が拭えなかった。
これまで、金本知憲前監督、矢野燿大現監督と若手起用が続いてきたことや、長年に渡りコーチングスタッフとして阪神を支えている平田勝男現2軍監督の昇格が有力視されていたこともあり、岡田氏の復帰は唐突に路線変更が行われた感が強い。
また、岡田氏の監督としてのキャリアも決して眩いものでは無い。前回の阪神監督時には、2005年にリーグ優勝を成し遂げているものの、日本シリーズでは千葉ロッテに0勝4敗で完敗を喫し、2008年ペナントレースでは夏場まで首位を独走するも、後半戦で失速し巨人に13ゲーム差を引っくり返され優勝を逃した。
2010年からオリックスを率いた際にも、3シーズンで全てBクラスという結果に終わっていることからも、阪神の17年連続V逸に終止符を打てるのか疑問符が付く。
さらに、今季は終盤こそCS争いを演じるまで盛り返したものの、キャンプイン前日に矢野監督が退任を宣言したことで物議を醸し、加えて開幕からリーグワーストの9連敗というつまずきもあったことから、来季はネガティブな空気を一掃し、再起を期すべきシーズンとなるはずだ。
日本一という栄光も知り、球団の象徴的存在の一人でもある岡田氏。しかし、名門立て直しに相応しい人物となり得るかは不透明のままだ。阪神やオリックス、さらには現場を離れてもその歯に衣着せぬ言動でも知られてきているだけに、久しく無縁だった「お家騒動」の火種としても、不安視する見方も強い。
加えて、今年の11月で65歳を迎える岡田氏が正式就任となれば、巨人・原辰徳、西武・辻発彦の両監督を上回り、(現時点の)球界最年長監督として位置づけられる。まさに「重鎮」としての存在となることは明らかだが、40・50代の指揮官が実績を残している現在の球界で、どれだけ手腕を発揮できるだろうか。
虎党ならずとも、複雑な思いを抱かざるを得ない今回の監督人事。再建への確かな一歩となるのだろうか。
(佐藤文孝)