着差は0秒1でも、内容は横綱相撲。ユメノシルシが659mの長い直線を早め先頭から押し切り、待望の初重賞制覇を飾った。
「逃げる馬がいなければ行くことも考えていたが、できれば1、2頭、先へ行ってくれないかと思っていた」と大久保洋師。大外18番枠から抜群のスタートでポンと飛び出したが、内からトリリオンカットがくるとスッと控えて好位を追走。途中から引っ掛かり気味にトップガンジョーがハナに立ち、理想的な展開になった。
「ハナに立つことも考えたが、内からきてくれたからね。内を見ながら行けたから、外枠も良かった。馬場のいい外々を通っていたら、直線で自然と先頭に立ってしまった。1頭になると気を抜くところがあるので、それだけに気をつけて追った。早いかなと思ったけど、よく頑張ってくれた」と殊勲の吉田豊騎手。2005年の鳴尾記念(メジロマントル)以来の重賞Vに「1年半ぶりですね。自厩舎の期待馬で重賞を勝ててよかった」と白い歯がこぼれた。
馬インフルエンザ騒動に揺れたここ2週の中央競馬だが、実はユメノシルシもその被害に遭うところだった。「たまたま厩舎の都合で放牧先から早めに戻したんだ。うちは使っている馬は10日前に戻すことも多いからね。もし、そうしていたら移動禁止でアウトだったから、運が良かったよ」と師は苦笑い。
これで今年に入って5勝目。2月に500万を走っていた馬がステークスウイナーにまでのぼりつめ、サマー2000シリーズも14ポイントでトップに立った。
「札幌記念に連闘?いやいや、そんな無理はしないよ。秋の目標は天皇賞。もともと能力のあった馬だし、ここにきて競馬の形ができてきたからね」と師。一方で、「本当は放牧に出してリフレッシュしたいが、移動できない。どうしたものかな」とつぶやいた。
次走は未定だが、毎日王冠をステップに本番へ向かうローテーションが有力。ユメノトビラのサクセスストーリーはまだ始まったばかりだ。