それにしても、2勝目を挙げるまで何と時間を要したことか。一昨年の夏の新潟で新馬勝ち以来、ここまで泥沼の13連敗中だった。皐月賞2着(2008年)の肩書も色あせかけ、口さがないファンからは「フロックだった」と揶揄(やゆ)されていた。
そんな逆風にもジッと耐え、この日がくるのを信じていたタケミカヅチについに競馬の神様が降りてきたのだ。コンビの柴田善騎手は、次のようにレースを振り返った。
「ズブくなっているので(指示通り)いつもより前に行き、思い通りの位置が取れました。直線はちょっと窮屈な場面があったけど、道中、脚をためられたので差し切れると信じてました」とは心憎い。
薄氷を踏むクビ差の勝利をモノにできたのも、眠っていたマイラーの素質が一気に開花した証しといえる。厩舎開業14年目で重賞トレーナーの仲間入りを果たした大江原調教師は、「まだ伸びしろのある4歳馬だし、次は安田記念を目指します」と明言。期待に胸を膨らませていた。