確か、山本昌・臨時コーチの指導がハマり、本人も手応えを掴んでいたはずだったが…。その山本氏に対し、阪神は来年2月のキャンプでも臨時コーチを要請することになったのだ。
「山本氏はテレビ局のレギュラーを持っており、キャンプシーズンは現地レポーターを務めてきました。解説者としての仕事もあって、調整が難しかったようです」(球界関係者)
山本氏の指導は阪神投手陣からも好評を博している。しかし、矢野監督が厳しいスケジュール調整をお願いしたのは、藤浪の蘇生がこの秋季キャンプで終わらなかったからである。
「紅白戦を見る限り、藤浪のノーコン病は克服されていません。ただ、今までは右バッターに直撃していたスッポ抜けがキャッチャーの上の方に行くようになったので、修正されつつあると思います。矢野監督が『方向性は間違っていない』と言っているのは、この点を指してのことです」(在阪記者)
チーム関係者によれば、「2イニングの途中から良くなった」という趣旨を、藤浪が話していたそうだ。しかし、マウンドに上ってから調整しているようでは、コワくて使えない。復活はまだ先の話となりそうだ。
「秋季キャンプの最終日は19日。前日の18日が本格的な練習ができる最後の日となりましたが、その時、ブルペンに山本氏、福原忍、安藤優也コーチも集まって、藤浪の投球練習を見ていました。3人が矢継ぎ早にアドバイスをしていましたが」(前出・同)
これまでは、山本氏に全てを一任し、他コーチは口出ししないことで申し合わせもされていた。それが「総出で」に変わったということは、紅白戦のピッチングを見て、本当にヤバイと思ったのだろう。
こんな情報もある。山本氏は手首の使い方について助言を送った。それは阪神コーチのこれまでの指導を否定したのではなく、「伝え方を変えた」ものだったという。しかし、
「藤浪の投げるボールの回転数が増えました。山本氏の助言でボールの威力が増したわけですが、今度はそれを制御できなくなった感もあります」(前出・関係者)
と“新たな悲劇”にもつながった。
投球フォームの一部分を修正しただけ、それも、短期間でボールの威力が増したのだから、藤浪は本当に凄い素質を持った投手なのだろう。
「二軍生活が長くなると、マイナス思考になります。そのまま引退してしまった選手もたくさんいます」(前出・在阪記者)
紅白戦では両軍合わせて5つのエラーがカウントされた。今季12球団ワーストの102個の失策を記録し、守備力強化はチーム全体の課題であり、長く練習時間も割いてきた。こちらも、成果ナシだ。かつて、星野仙一監督は2年目の指揮に入る前に選手を大量解雇し、チームを作り替えている。こうした思い切った改造案も、実は進言されているという。後は、矢野監督の決断次第だ。オフになっても、眠れない日々が続きそうだ。(スポーツライター・飯山満)