先場所、優勝決定戦で宿敵白鵬を鮮やかに叩きつけ、4場所ぶり24回目の優勝をした横綱朝青龍(29)が連覇に向け、順調な仕上がりをみせている。
朝青龍の好調さを測る物差しは、稽古内容もさりながら、その傍若無人で礼儀無視の口ぶり。身心ともに好調だと、別人のように表情が柔らかくなり、話す言葉からもトゲがなくなる。その出方がなんとも極端なのだ。
今場所の朝青龍は、故障している左ひじや右肩の調子がよほどいいのかもしれない。
出羽海部屋に出稽古に出かけた9日も、若い栃煌山や栃ノ心らと17番取って全勝すると、稽古終了後は満面に笑みを浮かべて上機嫌だった。
しかし、場所前、こういうふうに機嫌がいいときの朝青龍は要注意。今年の春場所前も、すこぶるご機嫌。稽古開始初日の会見でも、「大阪は大好きだから、相撲を取るのが楽しみ。最後の(表彰式での)あいさつもあるしな」と胸を張ってみせた。
ところが、いざフタを開けてみると、後半、大きく崩れて白鵬の雪辱を許し、これをきっかけに夏場所、名古屋場所と連続して低迷している。
その逆に、今年の初場所や先場所のように、場所前に引退もウワサされるなど、追い詰められてピリピリしているときは優勝、という望外の結果を収めている。
どうしてこんな“逆転現象”が起こるのか。朝青龍のことをよく知っている関係者は次のように解説する。
「朝青龍は怒りをエネルギーに変える名人。たとえば今年の初場所、場所前の横審の稽古総見で白鵬に6連敗するなど、状態は最悪。漫画家のやくみつるさんは、テレビで3日目に引退すると断言までした。ところが、その批判をバネに初日から14連勝し、優勝してしまった。先場所だってそうです。反対に、場所前、好調だと、ああいう勝気な性格だから、暴走して自滅することが多い。なかなか判断が難しいタイプなんです」
今場所の朝青龍は思い切って本命から外した方がいいかもしれない。