西武は岸孝之投手に続き、またも主力選手を楽天に取られたことになる。同じくFA宣言した炭谷銀仁朗捕手の移籍も確実な情勢で、菊池雄星投手もポスティングによるMLB挑戦が有力視されており、今年パ・リーグを制したライオンズの戦力は大幅にダウンする。
それにしても多い西武ライオンズのFA流出。工藤公康投手・石毛宏典内野手・清原和博選手・和田一浩外野手・豊田清投手・中島裕之選手・涌井秀章投手ら、そのほとんどが、「チームの顔」となった中心選手ばかり。ファンは「なぜ西武ばかり」と憤りを隠せない状況だ。
一体、西武ばかり選手が流出する原因はどこにあるのか。関係者のN氏はこう語る。
「元々西武は、伝統的に選手を最後まで面倒見ないチーム。80年代から90年代初頭のいわゆる黄金時代の主力メンバーで、西武で引退を迎えたのは東尾修や大田卓司くらしかいない。
秋山幸二はトレードに出してしまいましたし、辻発彦や平野謙、渡辺久信ら、主力のほとんどを晩年に戦力外としている。いずれも高額年俸がネックといわれていますが、あまりにも愛がない。唯一、伊東勤が西武で引退し監督となりましたが、結局退任時にいざこざがあり、もう西武戻ることはないといわれる。
交通の便の悪さや西武ドームの暑さ・寒さもあると思いますが、そんな選手を大事にしない姿勢が大きいのではないかと思う」(スポーツ関係者)
一方で、「西武の育成能力の高さも要因ではないか」とする声がある。別の関係者は、こう見る。
「西武はFA流出を見越した選手育成をしている。松井稼頭央のあとには中島裕之が収まったし、中島のあとは浅村が埋めた。浅村の後釜には西川愛也がいますし、ドラフトで即戦力内野手も指名している。
野上、岸が抜けても優勝したように、FA選手が抜けても代わりの選手が出てくる土壌がある。中村のように残ってくれるのがベストだとは思いますが、高年俸で落ち目の選手を抱えるより、若い選手を伸ばしたほうが良いと考えているのでは」
人気面を考えると、主力選手の流出はマイナスのようにも思えるが、若手選手にとってはチャンスが生まれることになり、新たなスターが誕生する可能性が高い。
「FA流出」は悪いことばかりではないのかもしれない。
取材・文 櫻井哲夫