ファンの後追い自殺が、初めて社会でクローズアップされた事件は1986年4月の岡田有希子投身自殺事件であろう。事件は4月6日、人気アイドルだった岡田が所属事務所・サンミュージックが入居するビルから飛び降り全身強打で即死したもの。人気アイドルの突然の訃報にファンは強いショックを受け、彼女の後追い自殺が相次いだとされる。
本事件は「ユッコ・シンドローム」と呼ばれた。正確な人数は不明だが、自殺から2カ月が経過した6月8日の朝日新聞には「30人を超える若者が自殺している」との記載があり、少なくとも岡田の死後、30〜40人が若者が自死を選んだとされている。
現に当時の報道番組では、悩める若者をあまり刺激しないよう岡田の後追い報道を控えたり、死体写真(当時の週刊誌には岡田の死体写真が掲載された)を報じないなどの配慮があったという。
なお、30人を超える若者が自死を選んだ背景には、単に岡田の死に対するショックだけではなく、同時期に日本で初めて、いじめ自殺として注目された中野富士見中学いじめ自殺事件などがあり、その影響があったためともされている。
続いて、若者の後追い自殺がクローズアップされたのは、1998年の「X JAPAN」の元ギタリストhideの死亡事件である。
hideの自殺とも言われる死から1週間後の5月10日、仙台市内のトイレで19歳の若者が「X JAPAN hide 今いくぜ」と書かれたノートをバッグに入れ首つり自殺したほか、6月には東京都八王子市内で女子中学生が自室のドアノブにはちまきをかけて首を吊り、自殺した。
この自殺方法はhideと全く同じであり、こちらも後追い自殺ではないかと思われたが、この女子生徒の遺書には「後追い自殺ではない」と記載されており、あくまで方法だけhideを参考にしたのではないかとされている。
また、2001年には、とんねるずの番組から誕生した人気音楽グループ「野猿」の解散コンサートの後、東京都港区のマンション前で女子高生2名が自殺した。このうち1人の女子高生は「野猿が解散するなら、もうどうでもいい」と周囲に語っていたが、以前から精神的に弱っていたらしく、野猿の解散が直接の原因ではないことが現在では判明している。
このように芸能人の自殺や解散をきっかけに自殺する若者は昭和末期から平成以降増えた印象がある。ただ、元から悩みを抱えていた可能性もあり、直接の原因とは一概には言えないのかもしれない。