「各チームとも、ダルビッシュの攻略法を研究しています」(米国人ライター)
そのサンプルとされたのが、4月10日のデビューマウンド(マリナーズ戦)。イチローとの対決が「攻略の糸口」があったという。
同日、両者の対決は3打数無安打。数字の上では「ダルビッシュに軍配が上がっている」が、メジャーのアナリストたちはそうは見ていなかった…。
「我々(現地報道陣)に明かしてくれた限りでは、今のダルビッシュは『日本ハム時代とピッチング内容が違う』と見ていました。イチローとの対決に攻略のヒントがあったそうなんですが…」(前出・同)
ダルビッシュは『球種の多い投手』でもある。その各球種の割合だが、日本ハム時代とメジャー3試合を比べ、明らかに違うのは「落ちるボール」だ。フォーク、チェンジアップなどがそうだが、日本ハム時代は『全投球の15%』を占めていた。しかし、デビューマウンドでは110球を投げたが、フォーク(スプリッター)、チェンジアップは1球ずつしか投げていない。
また、「ダルビッシュがメジャー公式球に違和感を持っている」との情報もある。
「メジャー公式球でツーシームを投げると、ダルビッシュがイメージしている、日本ハム時代の曲がり方とは違うようなんです。日本ハム時代は『シュートしながら沈む』軌道でしたが、メジャー公式球ではその曲がり幅が大きすぎて、コントロールできていない、と…」(現地特派員の1人)
日本ハム時代とのピッチングの相違点は、2つ。落ちるボールを極端に使わなくなったこと。そして、“制御不能”のツーシームが勝負どころで使えなくなったことだ。
「黒田との投げ合いになったヤンキース戦では、ツーシームでカウントを稼いでいました。過去2戦の登板で制御不能だったツーシームを修正しつつあると思われます」(前出・同)
では何故、イチローとの対決が攻略の糸口になったかと言うと、日本ハム時代のダルビッシュはツーシームを左打者の外角に集め、「ゴロ・アウト」を取っていた。そのツーシームがイメージ通りに投げられないということは「左打者を仕留める手段が減った」のと同じで、対戦チームのアナリストたちは「左打者にどんな球種を使ってくるか」を探っていたのだ。そのサンプルケースとして、左打者・イチローの打席がクローズアップされたのだという。
「今のダルビッシュが左打者に多投しているのは、ストレートとスライダー。初球から打って来るイチローがダルビッシュとの対戦では、ボールを見送っていたシーンも印象的でした。彼の知るダルビッシュ像と違ったからでは?」(前出・米国人ライター)
今後、対戦チームは「左打者にストレートを狙え!」の指示も出してくるかもしれない。おそらく、フォークボールの割合を激減させたのは、「中4日」のメジャー式先発ローテーションを考え、ヒジへの負担を軽減するためだと思われる。
ダルビッシュが日本ハム時代のツーシームのキレを取り戻すのが先か、それとも、対戦チームが左打者を軸に攻略法を編み出すのが先か…。メジャーの先発投手は1シーズンに同一チームに2度登板することはあっても、「3度目」はめったにない。ダルビッシュ攻略に躍起になっているのは、直接対戦が少ないからだろうか。