「とくに大谷の話題がホットです。米30球団全てが獲得に乗り出すことはないとしても、出席者の全員が彼に関するデータ(報告書)、映像資料を見たようです」(米国人ライター)
二刀流を意味する「two-way player」の言葉もよく耳にするという。ほとんどのGMが獲得を示唆するようなコメントを日米メディアにも伝えているそうだが、実際は違う。争奪戦からリタイアした米球団、交渉において「two-way player」としてどういうふうにやっていくつもりなのかを聞き直す球団がある。大谷側の回答次第では交渉を打ち切る球団も出てきそうだ。
「大谷側がメジャーでも『two-way player』としてやっていきたい希望を持っていることは、こちらでも伝わっています。ピッチャーとバッターをどうやって兼任していくつもりなのか、ちゃんと聞かないと…」(前出・同)
メジャーリーグの先発間隔は、中4日。先発ローテーションは5人の投手で編成される。日本は6人で、試合のない移動日もあるから、先発投手は「中6日」で登板することが多い。
大谷を獲得したチームは、自動的に変則ローテーションとなる。大谷が先発して、次回登板までの4日間のうち、1日か2日、打者出場したとする。「本当に4日後の先発登板が可能なのか」を考えれば、答えは「ノー」だ。少なくとも、米30球団のGMは「体力的に無理。一時的にできたとしても、シーズンを通しては不可能」と見ている。したがって、大谷を獲得した米球団は自動的に「5人プラス大谷」となる。大谷以外の先発投手5人は、「中4日で投げたり、投げなかったり」の変則ローテーションを強いられる。
「メジャーの先発投手は年30試合以上の登板、あるいは、年間200イニングを投げて、初めて一流と評価されます。大谷が入れば、ローテーションは変則となり、コンディション作りが難しくなります。6人で先発枠をまわすので、自動的に30試合以上、200イニングの登板は不可能となります」(前出・同)
しかも、メジャーリーグの投手は「30試合以上」「200イニング到達」でボーナス支給のオプション契約を交わすのが一般的だ。GMたちは大谷を獲得した後の他先発投手との兼ね合いに、頭を悩ませているそうだ。米球界では練習メニューを巡って、コーチと選手がぶつかった場合、トコトンまで話し合い、覚書を交わすこともある。まさに契約書の世界であり、「中4日、年30試合以上、年間200イニング」を目指す投手にすれば、
「変則ローテーションは聞いていない。契約違反だ!」
と、ゴネ出すのは必至だ。
こういう現実を大谷に突き付けるとするGMもいれば、いったん球団に持ち帰って協議するとした球団もあるそうだ。「二刀流を応援する」とコメントした米球団もあったが、こちらは日本に向けてのリップサービスと見たほうが良さそうだ。
現地時間11月15日、大谷の代理人を務めるネズ・バレロ氏がGM会議の会場に現れ、「売り込み」をしていた。その後、報道陣に囲まれ、「二刀流実現のために力を尽くす。彼は日本で二刀流が可能だと証明した」と話していたそうだ。力を尽くす、か…。優秀な代理人だと言われている。しかし、売り込みの場では「他投手との兼ね合い」という、難題を突き付けられたのではないだろうか。