「できることならば、やりたくない」
とボヤいている。
セ・リーグは本当に弱いのか? 交流戦が導入された05年以降、日本シリーズを制したセ・リーグチームは3球団だけ。07年の中日と09年、12年の巨人がそうで、巨人がシリーズ連覇に失敗した13年以降にいたっては、全てパ・リーグチームが日本一に輝いている。
13年以降、日本シリーズのリーグ別勝利数だが、パ・リーグ20勝、セ・リーグ9勝。交流戦はシーズン中なので、「この時期はたまたま優勝チームの調子が悪かった」との言い訳も立つ。しかし、真剣勝負の日本シリーズでもここまで差が開くとなれば、「セ・リーグとパ・リーグの実力差はある」と言わざるを得ないだろう。
「昨年の交流戦では、巨人がドロ沼の連敗街道にあって、非常に苦しんでいました。15年もDeNAは、交流戦前は首位だったのに、3勝14敗1分けと大きく負け越し、ペナントレースも最下位で終了してしまいました。同年、中畑清監督(当時)は責任をとって辞任し、『交流戦がなかったら…』とファンは悔やみました」(スポーツ紙記者)
セ・リーグ球団のスタッフに「敗因」について聞いてみた。個人的な見解と前置きしたうえで、「ピッチャーの差」と答えていた。
「パ・リーグは指名打者制、つまり、ピッチャーは打席に立ちません。セ・リーグの投手は打席に立たなければならないので、マウンドで自軍の打順を考えながらピッチングをしてしまうんです。これは習性ですね。前イニングで、自軍の攻撃が6番バッターで終わったとします。『このイニングを投げたら、次の攻撃で9番の自分に打席がまわってくる。ここで代打、このイニングで交代だな』と考えてしまうんです」
通常シーズンで打順がまわってこないパ・リーグの投手は、「投げること」に専念する。こうしたシーズンの過ごし方がレベルアップにつながっているのだという。
また、セ・リーグ出身のプロ野球解説者は「配球の傾向」も挙げていた。
「セ・リーグは全体的に3ボールカウントになって粘られたら(ファールが続く)、四球で歩かせて仕切り直そうという考えが浸透しています。走者がたまった後、パ・リーグのバッターはフルスイングしてくるので大量得点のビッグイニングになってしまう」
ここでも指名打者制が影響している。セ・リーグの投手は打席に立つ。自身がインコースのエグイところに投げれば、打席に立ったときに「お返し」を食らう。自身がお返しを食らわなくても、自軍の主力バッターが必要以上の内角攻めに合う。パ・リーグの投手は打席に立たないので、「お返しがどうの」ということは基本的に考えない。
したがって、パ・リーグの投手も内角を攻める割合が多くなる。バッターも厳しい内角攻めを当然と受け止めており、自ずと対戦のレベルも上がっているというわけだ。
こうした関係者の証言を検証してみると、セ・リーグも指名打者制の導入を考えたほうが良いのかもしれない。セ、パ両リーグを経験した投手出身のプロ野球解説者がこう言う。
「セ・リーグは投手が打席に立つので、犠打を使う場面が多い。内野守備のディフェンス・サインはセ・リーグのほうが細かく、奥行きも深いと思います」
そもそも、交流戦が導入されたのは、パ・リーグ側の経営難を救うためだった。導入前年の04年は近鉄とオリックスの合併騒動に揺れ、当時、巨人人気による地上波のテレビ放映料を得ていたセ・リーグ側が手を差し伸べたのだ。初期の目的は、完全に果たされたと言っていい。
交流戦の導入によって、球宴、日本シリーズの稀少価値が下がった。交流戦の期間中、プロ野球の興行収益が大きく上るということもない。交流戦そのものの在り方が問われているが、「セ・リーグ、頑張れ」の声がパ・リーグ球団のファンからも聞こえているくらいだから、それなりの関心を持たれているのだろう。セ・リーグが強くならないと、交流戦が飽きられてしまうだけだが…。(スポーツライター・飯山満)