史上最高ともいわれた今春のグランプリ・宝塚記念。国際GI馬アドマイヤムーン、春の天皇賞馬メイショウサムソン、牝馬でダービーを制したウオッカなどそうそうたる顔ぶれを前に、アドマイヤフジは13番人気の低評価に甘んじていた。
しかしどうだ。フタをあけてみると鋭い末脚を発揮。勝ったアドマイヤムーンから0秒5差の4着と健闘してみせた。
「あのメンバー相手にあれだけ走ってくれた。流れが向いたとはいえ、最後は本当にいい脚を使ってくれた」と込山助手は振り返った。
道中は15番手の後方待機。前崩れの展開をうまく利用した面は確かにあるが、道悪のハイペースを耐えて繰り出した切れ味は完全復活を実感させるに十分な迫力だった。
「ずっとGIでも好勝負できると思ってきた素質馬だから」と込山助手はうなずいた。
皐月賞は5着。ダービーは4着。菊花賞も6着とクラシックでも常に好勝負を繰り広げた。ディープインパクトと同期という不運がなければ、冠をひとつ取っていても不思議ない実力馬だ。
しかし、3歳時の激戦続きが響いたのか、昨年1月に日経新春杯を制した後は長いスランプに陥った。「状態面がいまひとつで馬が苦しがっていた」流れを変えたのはダイヤモンドSの後の放牧。そこで立て直された効果が今につながっている。
函館に入ってからも動きは軽快だ。11日の1週前はWコースで5Fから65秒9→50秒2→37秒3→12秒1。「今は本当に体調が安定して、疲れもなくいい状態を保っている」と文句なしの走りだった。
末脚勝負の追い込み馬だけに、小回りの函館に不安もあるが、「競馬が上手なので大丈夫でしょう。何よりGIII(JpnIII)のハンデ戦なら勝たないといけない」と言い切った。
この後は新潟記念へ。秋のGIで堂々と主役を張るため、まずはサマー2000シリーズを手に入れる。