新日本プロレス4.9両国国技館大会で、鈴木軍の“秘密兵器”ザック・セイバーJr.を相手に苦戦を強いられたものの、最後は裏GTRからの正調GTRで完膚なきまでに叩きのめし、NEVER無差別級王座3度目の防衛に成功した後藤洋央紀は、次期挑戦者に鈴木軍の“ボス”鈴木みのるを試合後に逆指名した。
ザックとの試合では、セコンドに付いていたエル・デスペラードがエプロンに上がり、レフェリーを引きつけている間に、背後からみのるが急襲。後藤を突き飛ばしてレフェリーと激突させると、スリーパーで後藤を捕らえ、ゴッチ式パイルドライバーの体勢に入るも、後藤がバックスープレックスでみのるを投げ捨て、ザックとデスペラードを蹴散らし、牛殺しで鈴木を排除するという、後藤1人で鈴木軍の3人を蹴散らすシーンがあった。
昨年の春にCHAOSに入ってから、『G1クライマックス』準優勝や、柴田勝頼を破ってNEVER無差別級王座を獲得するなど、実績は残している後藤だが、ここまでインパクトのある強さを見せたのは久々である。
試合後、後藤も手ごたえを感じたのか、場外に残っていたみのるにNEVER王座を見せつけるように掲げると大乱闘。鈴木軍のボスであるみのる自身が介入して失敗した例は記憶にないだけに、みのるのプライドもかなり傷をつけられたに違いない。インタビュースペースに現れたみのるは、立て札をぶん投げるなど大荒れだった。
これを受けて新日本プロレスは4.27広島グリーンアリーナ・小アリーナで、両者によるタイトルマッチを決定した。
「お前らが持っている“宝”を全部寄越せ!」
今年の1.5後楽園ホール大会に、2年振りとなる新日本マットに鈴木軍のメンバーを引き連れて現れたみのるは、IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカを急襲するとこう言い放った。この“宝”とは、新日本が管轄しているすべてのタイトルを指している。鈴木軍としては、タイチ&金丸義信がIWGPジュニアタッグ王座を、ザックがブリティッシュヘビー級王座を獲得しているが、2.5北海きたえーる大会ではみのるがオカダに敗れ王座奪還に失敗。またランス・アーチャーの怪我などもあり、当初の思惑通りに“宝”が獲れていないのが現状だ。
過去に両者は、2011年8月8日に横浜で行われた『G1クライマックス』公式戦で対戦しているが、この時はみのるがゴッチ式パイルドライバーで勝利を収めている。しかし、後藤に4.9両国大会で見せたような強さがあれば、鈴木軍の介入があったとしても、問題がないのかもしれない。むしろ、みのるを相手に防衛すれば、これまでIWGPヘビー級、IWGPインターコンチネンタルに続く、“3番手”と思われがちだったベルトの価値は一気に上がることになる。また後藤には、現在欠場中の柴田勝頼とIWGPヘビー級王座をかけて闘いたいという長年の夢もあり、ここでつまずくわけにはいかない理由がある。
対するみのるも、最近まで抗争を繰り広げていただけに、柴田に対しては思うところもあるだろう。しかしそれ以上に、鈴木軍のボスとして今回も敗れるようなことがあれば、新日本マット内の影響力の低下は否めない。
今回のタイトルマッチは、両者とも負けられないという、見る側にはとても興味深い展開となった。
(どら増田)
【新日Times vol.65】