「投手継投策が理解不能」
そんな指摘が取材記者団からも漏れていた。
開幕第2戦、復活を懸けて先発マウンドに上った藤浪晋太郎(23)は6回途中で降板した。完璧ではなかったが、走者を背負いながらも要所を抑えてきた。
「5回裏、巨人打線の攻撃をどうにかしのぎ、『このイニングで交代かな』という空気が漂っていました」(取材記者)
だが、金本知憲監督(50)は6イニング目のマウンドに藤浪を送った。いきなり走者を出し、後続投手も打たれ、同点に…。勝利投手の権利もなくなってしまった。逆転負けの敗因は、試合中盤で息切れした藤浪ではなく、阪神ベンチの継投ミスと言っていい。
それだけではない。4月4日のDeNA戦、2年目の小野泰己(23)が6回まで「被安打2」と好投したときもそうだった。その7回表の阪神の攻撃で小野に打席がまわる。二死走者ナシとはいえ、金本監督は代打を送らず、そのまま小野を打席に立たせ、7回のマウンドにも向かわせた。7回裏は三者凡退に打ち取ったが、案の定、8イニング目の小野はスタミナ切れし、いきなり先頭打者をヒットで塁に出してしまった。その後四球も出し、“楽勝ムード”も一転して、一打逆転のピンチに。リリーフ陣がなんとか踏ん張って勝利できたが、後味の悪い一勝となってしまった。
「7回に小野が打席に立った時点で、阪神の救援陣は投球練習を止めています。『ベンチは小野に完投させるつもりなんだ』と解釈したようです」(前出・同)
小野の次を託されたマテオは慌ててキャッチボールを再開した途端に「行け!」の指示を出されたという。これでは勝っても、ベンチと選手の信頼感が崩されてしまう。
関西地区で活躍するプロ野球解説者がこう言う。
「金本監督は『救援陣を休ませたい』とこぼしています。まだ始まったばかりで『休ませる』はおかしいですが、阪神のリリーフ陣は昨季から連投に次ぐ連投、これから先の長丁場を見据え、勝負どころとなる夏場までは無理をさせたくないと捉えています」
救援陣の負担軽減ということは、先発投手には長いイニングを投げてもらわなければならない。チームを窮地に陥れた“続投指示”は、若い藤浪、小野に「完投する気持ちでやって貰わないと困る」という、無言での激でもあったわけだ。
しかし、辛辣な意見も聞かれた。
「阪神は試合を犠牲にできるチームには成長していません。貪欲に勝ちにいかないと、優勝戦線には残れません。昨年、一昨年と広島を独走させた過ちを繰り返すことになる」(球界関係者)
たしかに、昨季の広島は7月の球宴明けには独走態勢を築いていた。優勝するには藤浪の復活は欠かせない。金本監督は藤浪に「完投できるまでに」と言うが、首脳陣のなかからは「まずは勝たせてやりたい」とこぼす声も聞かれた。こういった食い違いをなくすため、話し合う必要もある。
本命・広島が独走態勢を築く前に、藤浪は立ち直ることができるのだろうか。